コンパスはやはり北を向く〜地球磁場の反転は近い将来はない
コンパスの針が南を向いてしまうなんてことを心配する必要は、ひとまずしなくていいようだ。11月23日付けのマサチューセッツ工科大学ニュースオフィス(MIT News Office)は、「地球磁場が近い将来に反転する危険はない」とするMITの最新の研究成果を米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)に発表したと報じている。
地球には概ね南極から北極へ向かう磁場が存在し、これを地球磁場(あるいは地磁気)という。コンパスの針が北を指すのはこの磁場に反応するからである。またこの磁場が、太陽から飛んでくる有害な荷電粒子を遮蔽しているため、地表の環境が守られている。しかし、地球磁場の強度は過去200年の間に減少しており、その減少の速さから、あと2000年ほどで磁場がなくなり、その結果、太陽からの荷電粒子に対して、地球が一時的に無防備な状態になると考えられてきた。
磁場が著しく減少すると、地表に届く荷電粒子が増加するため、心臓のペースメーカーから送電網に至るまでさまざまな電子機器において障害が起こり、遺伝子の突然変異が誘発される可能性があるという。また磁場の減少は周期的な地球磁場の反転(磁場が逆向きになること)に伴い生じ、再び磁場が安定した遮蔽強度に戻り反転が終わるまでには数千年かかると言われている。
しかし、MITの研究者の計算によると、直近500万年の磁場の強度の平均と比べると現在の強度は、そのおよそ2倍であることがわかった。これは現在の磁場の強度が地球磁場の反転が起こる不安定な状態になるまで減少するには、まだ非常に長い時間がかかることを示しているという。
地球は誕生以降、地球磁場の反転を何度も繰り返しており、その間隔は不規則である。論文の筆頭著者のワン氏(Huapei Wang, a postdoc in MIT’s Department of Earth, Atmospheric and Planetary Sciences)によると「時には反転は4000万年起こらず、また別の時には100万年の間に10回起こることもある。平均すると反転が生じる間隔は数十万年。最後の反転はおよそ78万年前に起きているので、今は既に期限が過ぎていることになる。」
次の反転は一体いつ起きるのか。これについてワン氏はこう述べている。
「私が言えることは、今の地球磁場の強度の減少率が維持されるなら、長期平均値に到達するのに、あと1000年かかるだろうということ。そこから地球磁場の強度は再び上昇を始めるかもしれません。そのあと何が起こるかについては本当に予測する方法がありません。」
少なくとも今後1000年は特に心配はいらないようだ。
Image: Huapei Wang (with material courtesy of NASA’s Earth Observatory) and edited by MIT News