痛くないインフルエンザ予防接種 鼻スプレー「フルミスト」

毎年気温が下がり、空気が乾燥してくると、流行の兆しを見せ始めるインフルエンザ。
これまでインフルエンザの予防接種は、不活化ワクチンを注射によって接種する方法が一般的であった。しかし、嫌がる子どもを引っ張っていき注射をさせても、毎年かかってしまうという声も少なくない。厚生労働省によると、乳幼児の注射型ワクチンによる発病防止効果は概ね20~50%だという。

そんな中で注目されているのが、インフルエンザの生ワクチンを直接鼻に噴霧するタイプの予防接種「フルミスト」である。ワクチンを鼻に直接噴霧するため、注射と違って痛みがないのが最大の特徴である。また、従来の注射型の効果である血液の抗体に加え、ウイルスの侵入口である鼻の免疫も得られるため、発病予防効果が高いというメリットがある。2~7歳に限っては80%以上の高い予防効果があると報告されている。さらに「フルミスト」は有効期間が長く、約1年間効果が持続する(注射型は約4カ月)。

「フルミスト」は、アメリカでは2003年、ヨーロッパでは2011年に承認され、予防接種の主流となっているが、日本ではまだ承認されていないため、医療機関が個人輸入をして患者に提供している。未承認ワクチンのため、万一重篤な副作用が生じた場合、医薬品副作用被害者救済制度が適用されない。

副反応として一般的なものは鼻水・鼻づまり・頭痛・発熱などの症状だが、重篤な副反応の報告はない。その他のアレルギー反応など、注射型と同様の副反応が起こる可能性はあるが、頻度は非常に少ないとされている。

筆者も今年初めて都内の病院で「フルミスト」を接種してみた。箸ほどの細さで筒状の瓶を鼻の中に入れ、鼻の奥にシュッと噴霧する。両鼻に噴霧して1分もかからず接種は完了。痛みはまったくない。鼻の奥から喉に流れてくる薬液はほんのり甘い味がする。医師からの注意事項は「30分ほど鼻をかまないでください」のみ。

「フルミスト」の対象年齢は2~49歳(米国食品医薬品局=FDA)、基本的には1回接種。注射型は13歳未満は2回接種のため、痛い注射を子どもに2回受けさせるのが負担だという保護者は「フルミスト」の接種を考慮に入れてもよいかもしれない。

(写真はイメージ)