他者の行動まねる「ミラーニューロン」、マーモセットにも
国立精神・神経医療研究センターと理化学研究所の研究グループは10日、コモン・マーモセットの前頭葉下部から、他者の行動をまねるときに活動する神経細胞「ミラーニューロン」を世界で初めて発見したと発表した。
ミラーニューロンは、他者がとった行動を見て、自分が同じ行動を行なうと鏡のように神経活動を引き起こすというもの。さらに、同じ動作を見ても動作をしている者の意図によって反応の仕方に違いが現れるため、他者の行動を理解する役割を持ち、人間にとって非常に重要とされている。このミラーニューロンは、霊長類では4000万年前に分岐したヒトを含むグループ「旧世界ザル」のヒトとマカクザルでしか発見されていなかったが、今回、分岐した他方グループ「新世界ザル」のコモン・マーモセットにもあることが明らかになった。
同グループはこれまでに、上側頭溝の一部(FST)にある他者の行動・気持ちに反応する「半ミラーニューロン」を発見していたが、ここに蛍光トレーサーという物質を注入することで、FSTと神経結合する部位が前頭葉下部にあることを発見した。さらに、この前頭葉下部と結合する神経細胞を記録することでミラーニューロンが存在することを示した。FSTからは「他者の行動や意図の情報」を受け取っており、さらに前頭葉下部からは「自分の行動や意図の情報」を受け取って、この2つの情報が連合することによってミラーニューロンが形成されると分析している。
マーモセットは遺伝子操作が可能なため、マウスやラットのように研究しやすい「モデル生物」にできる可能性がある。今後、他者の気持ちを読むことや共感することが困難な自閉症患者の症状の解明、診断、治療に大きく貢献し得るとチームは述べている。
コモン・マーモセットの側頭葉FST
画像提供:国立精神・神経医療研究センター
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