年末年始の健康管理法【中編】~食べ過ぎによる糖尿病に注意
長期的な健康管理のため、年末年始は「食べること」について振り返る期間にすることを提唱したい。
17日、厚生労働省が発表した2014年の患者調査の結果によると、国内の糖尿病の総患者数(継続的に治療を受けていると推計される患者数)は316万6000人で、前回(2011年)から、およそ46万6000人増え、過去最多となった。糖尿病には遺伝的に血糖を下げるインスリンを分泌する能力が低いために若くして発症する1型と、糖質の過剰摂取に運動不足が加わって発病する2型があるが、増加しているのは2型である。
「糖尿病って食べ過ぎて肥満になった人がかかる病気でしょう? 私はやせているから大丈夫ですよね」と患者さんから質問を受けることがあるが、これは事実ではない。あまり知られていないが、日本人をはじめとする黄色人種は、白人や黒人より遺伝的に血糖を下げるインスリンを分泌する能力が低い。インスリンは糖を細胞内に取り込む作用があるので、白人や黒人は過食するとその分だけ肥満になるが、黄色人種は過食を続けると肥満になる前に、インスリン分泌が追い付かず糖尿病になってしまう人が多い。太らないからといって安心はできないのである。
糖尿病による高血糖は、全身の血管・神経・臓器への障害、免疫低下を引き起こし、重度感染症、心筋梗塞、脳卒中、腎不全、失明といった合併症を引き起こす。しかし、糖尿病自体は痛くも痒くもない。このため、放置しがちなのだが、痛み、しびれといった症状が顕在化してから対処すると、健康管理が難しい。
筆者の父は昭和10年代の生まれである。終戦後の食べ物が不足している時代に成長期を迎え、辛かった体験は今でも忘れられないと言う。庶民にとっては「毎日、腹一杯食べることが夢」であった時代が長く続いた。そういう時代であれば、年末年始に暴飲暴食しても、救急車のお世話になるほどでない限り、深刻な健康問題にはならなかった。しかし、今は年中、家にも職場にも、街に出ても食べ物が溢れているし、食べ物の広告・宣伝も溢れている。多くの人にとって、腹一杯食べられることは現実となり、むしろ体重を減らすことが夢となった。
戦後の経済成長に伴って、糖尿病の総患者数がどの程度増えたのかという統計資料は見つけられなかったが、厚生労働省の患者調査の推計患者数のデータがある。調査は、3年に一度、10月の平日の3日間に受診した患者さんの数を数え、推計患者数とするもの。「糖尿病」の推計患者数が初めて示されたのは1965年で、当時の推計患者数は3万3000人だった。2014年で24万3200人なので、この50年間で7.3倍に増えていることになる。日本の人口は、この間、9800万人から1億2700万人と1.3倍である。この50年間に啓発が進み、医療を受診しやすくなったので、確認された患者数が増えた部分もあるが、それを差し引いても、大幅に増えたことは間違いない。
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