電力フリーの身体機能強化スーツ 広島大などが開発

広島大学の栗田雄一准教授は、ダイヤ工業(岡山市南区)と共同で、体重を利用して電力を用いない身体機能強化スーツ「アンプラグド・パワード・スーツ(Unplugged Powered Suit)」を開発した。装着者が足裏のポンプを踏む際の空気圧で動作するというもので、2年以内に効果検証用のプロトタイプを製作し、2020年までに販売を目指す。

空気圧の人工筋は軽くて柔らかなため、身体に装着して動作を支援するのに適している。しかし、十分な力を出すためには、従来はかさばるコンプレッサーやタンクを必要としていた。ダイヤ工業が開発したものは、わずかな空気圧で身体動作を支援できるという。

歩行支援に用いる場合、ポンプと人工筋を同じ足ではなく、反対側の足に繋ぐ。片方のかかとでポンプを踏むと、反対側の足の太ももに沿って着けた人工筋が収縮して足を持ち上げるのを支援する。かかとが地面を離れるに従ってポンプが解放され、反対側の足が接地するタイミングで人工筋の収縮力が消える。つまり、歩行の動作に合わせて、必要な時に太ももを上げるのを支援できるのだ。直感的には、足を上げるきっかけが得られる感覚だという。

応用例としては、走行速度を向上させる場合、人工筋をふくらはぎの筋肉に沿って着けてポンプを同じ側のつま先に置くことで、走行時の地面の蹴り出しの力を強化できる。ただし、歩行支援の場合よりも人工筋による支援力の生成タイミングを早くするなどの調整が必要だ。また、人工筋を大胸筋(腕を振る胸の筋肉)に沿って着け、ポンプを反対側の足裏に置けば、投球時の腕ふりの力を強化して投球速度が向上する。

現時点ではコンセプト確認用のプロトタイプが数点あるだけだが、より効果的な人工筋の配置の検討、ポンプと人工筋の容量の最適化などを行い、1年以内に次期プロトタイプを開発する。複数の対象者へのモニタリングによる意見収集と効果検証、他部位への展開、装置の着けやすさ改善を行い、2年以内に一般被験者に対する効果検証用のプロトタイプを製作する。歩行改善効果などの有効性や装着性、安全性を検証した結果を踏まえ、2020年までの販売を目指す。

販売時にはポンプは靴に内蔵し、機能強化したい部位に応じた人工筋と配管を内蔵したスーツを作る。つまり、「装着」して使うのではなく、「靴を履き、スーツを着るだけ」となる。服としての販売を想定しているため、価格は数万円以内を目標としている。

電力フリーの身体機能強化スーツ 広島大などが開発

画像提供:広島大学