蜜入りリンゴ 甘さの秘密は香りにあり
蜜入りのリンゴといえば、その蜜が甘くおいしいと考えられてきたが、その考えを覆す結果が発表された。農研機構・中央農業総合研究センターの17日付発表によると、蜜入りのリンゴと蜜のないリンゴとでは、糖の量や甘味度の差はほとんどなく、おいしく感じる理由はその香りにあるという。
同機構は、小川香料及び、青森県産業技術センターりんご研究所と共同で、蜜入りリンゴに香気成分として多く含まれる「エチルエステル類」が、リンゴの風味をよくするための重要な成分であることを明らかにした。
エチルエステル類とは、エタノールと脂肪酸が縮合(エステル結合)して生成する化合物のことで、果物や花の甘い香りのもとになっていることが知られている。
糖度に差のない蜜入りリンゴと蜜無しリンゴで官能評価をすると、蜜入りのほうが香りが強く、香りを感じないように鼻をつまんだ状態で試食すると、味の強さに差はなかったという。
欧米では、貯蔵性が低いため生理障害(栄養分の過不足による障害)として扱われるという蜜入りリンゴ。アジアや国内では、「甘くておいしい」と人気があるが、糖度などを調べても蜜のないリンゴと差がないケースが多く、人気の理由は謎とされていた。これまで果物の「おいしさ」は糖含量や糖度が指標とされてきたが、この研究によって香りの重要性が明らかになり、今後、香りに着目したおいしさの指標や新品種の改良、貯蔵技術の向上に役立つことが期待される。
この結果は、15日付け「日本食品科学工学会誌」に掲載された。
(写真はイメージ)