冬から春へ ドイツの桜
ドイツで真っ先に春の訪れを告げる花は、雪割草とクロッカス。道端や公園の植え込みに植えられた小さな花々が開き始めると、灰色だった冬の街並みに突如鮮やかな色彩が生じる。
しかしそこから、ほかの木々が芽吹き、花々が咲き始めるまでちょっと辛抱が必要だ。今年は春分の日(3月20日)を境に気温が上昇し、ドイツの春のブレークスルーがやってきた。ドイツの春、それは梅も桜もモクレンもほぼ一斉に咲きだすという、「北国の春」だ。ドイツの春の、桜の存在感はあまり大きくない。「桜前線」、「桜開花予報」というような言葉も概念も存在しない。なぜなら、桜そのものが日本と比べて格段に地味だから。
同じソメイヨシノでも、日本の桜の息を飲むような美しさ、華やかさがドイツの桜にはない。桜の木も小ぶりなものが多いような気がする。
一方、春の花々が一通り咲きそろうと、少し遅れて花を開くのが八重桜だ。濃いピンク色の花をつけるこの桜は、遠目に見ても存在感と華やかさがある。しかしドイツ人にとっての桜は総じて、花が散った後になる実、さくらんぼの方が重要なのかなと感じることがしばしばだ。
「その国に生えている木はその国の人々のメンタリティを表している」という言葉があるけれど、同じ木でもところ変われば、その枝ぶりや様相、存在感が変わってくる。今年もドイツの桜を見ながら、そんなことを考えた。