無人の月着陸実験機、2018年に打ち上げへ
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は20日、無人の月着陸実験機「SLIM(スリム)」を2018年に打ち上げる計画について、内閣府の宇宙政策委員会の小委員会と文部科学省の有識者会合で説明した。宇宙政策委員会は、夏までに正式決定する見通し。小型ロケット「イプシロン」5号機で内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県)から打ち上げ、月着陸に成功すれば日本初となる。
月面への無人機着陸は、旧ソ連、米国、中国がすでに成功しているが、着陸地点の誤差は1km以上あった。SLIMはデジカメの顔認識機能のような高速画像処理と、取得した画像からクレーターの分布を抽出して地図照合する手法で誤差を100m程度まで縮める。将来の月や火星などでの探査に役立つ、ピンポイントでの軟着陸技術を月面で実証するのが狙い。2007年に打ち上げられ、月を周回して観測した探査機「かぐや」が見つけた「マリウス丘の縦孔」に近い、幅500mほどの帯状地形への着陸を目指す。
イオンエンジンで推進し、非重力天体である小惑星に着陸してサンプルを取り、地球へ帰還した「はやぶさ」の技術や、太陽の光の圧力で帆船のように進む「イカロス」の技術など、深宇宙探査で日本は世界的に評価される技術を持っている。一方、遅れているのが月や火星などの重力天体に着陸する技術。火星への着陸には、まず火星の周回軌道に乗らないといけないが、日本としてはまだ実現できていない。そして火星の大気中を降下し、軟着陸をするという複合技術が必要となる。そうした先の技術を見据え、月の周回軌道に乗ることはかぐやで達成したので、次のステップとしてSLIMによる高精度月着陸を目指している。
画像提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)