【特集】伊勢志摩サミット(4) 世界経済に「あらゆる政策を総動員」
26から27日にかけて三重県志摩市で開かれた先進7カ国首脳会議(G7)サミット。すべての議論を終えた27日午後2時、議長の安倍晋三首相が議長会見で討議の結果を発表した。
■世界経済
今回のサミットの最重要課題であった世界経済については、初日の第1セッションで討議された。現状に対する危機感について認識を共有した上で議論し、G7で協調して世界経済をけん引する「伊勢志摩経済イニシアチブ」を宣言。「あらゆる政策を総動員して取り組む」と表明した。
世界経済は新興国経済成長の陰りと先進国経済の慢性的な需要不足を背景に低迷し、2015年、世界の経済成長は08年のリーマンショック以来最低を記録した。今世界が直面しているリスクの認識をG7で共有し、これに対しG7が協調して金融・財政・構造政策からなる「三本の矢」を実施するとした。
TPP、日EU、EPAなどの自由で公正な経済圏の拡大や、女性の活躍のための環境づくり、公衆衛生対応など国際保健、需要を底上げするためのインフラ投資活性化などについてG7でコミットメントし、「伊勢志摩経済イニシアチブ」としてまとめた。
インフラ投資について、今後5年間で世界全体に対して総額約2000億ドル規模を投資するとしている。また、女性の活躍に対しては、2016~18年の3年間で約5000人の女性行政官等の人材育成、約5万人の女子生徒への教育支援を実施する旨を表明した。
■政治・外交
平和と安定を守るために、テロ資金の流入を根絶することや、難民問題は根本を断ち切るためにグローバル支援を強化することで合意した。
また、海洋の自由の保障についても言及。「一方的な行動は許されず、司法手続きを含む平和的手段を追求すべき。完全な履行を求めていくことで一致した」とし、国名を明言することを避けたものの、中国が進出している東シナ海、南シナ海の地名を挙げて懸念を表した。ウクライナの紛争については、すべての当事者に対して「ミンスク合意」に基づいて情勢を平和的に解決するための行動を求める。
北朝鮮の核実験と弾道ミサイル実験については、「G7は最も強い表現で非難する」とし、国連安保理決議の順守とともに、拉致問題を含む国際的懸念への迅速な対処を強く求めるとした。核兵器のない世界を目指すため、核不拡散と軍縮に向けた決意をあらためて確認した。サミット後のオバマ大統領の広島訪問について「核兵器のない世界の実現にむけた大きな力になると確信している」と期待を込めた。
画像提供:サミットフォト