青色LEDのさまざまな活用
昨年のノーベル物理学賞は、「効率的な青色LEDを発明し、明るく省エネルギーな白色光源を可能とした」として、名城大学の赤﨑勇先生、名古屋大学の天野浩先生、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の中村修二先生に授与された。「白熱電球は20世紀を灯してきたが、21世紀はLEDランプによって灯されていくだろう」と受賞のプレスリリースにも記されているが、青色LEDは単純に照明としての利用だけではない。
<身の回りでの適用>
スマートフォンの液晶ディスプレイは、背面から液晶を照らすバックライトに赤・緑・青の3色のLEDが用いられている。LEDは高電圧高電源がいらないため、小型化に向いているためだ。さらに、青色LEDの技術を発展させて作られた青色の半導体レーザーがブルーレイディスクに用いられている。ブルーレイディスクはDVDに比べて4倍以上の記憶容量を持つが、DVDでは赤色の半導体レーザーが用いられていた。青色の光は赤色の光よりも波長が短いことから、より多くの情報を送ることができる。
<効率よく植物を育てるために>
環境の変化に左右されずに植物を育てる「植物工場」では、室内で赤色LEDと青色LEDを組み合わせて使用する。赤色LEDの光の波長は660nm(ナノメートル、ナノは10億分の1)前後で、光合成を行なう葉緑素は波長640~690nmの光をよく吸収する。赤色LEDの光を当てることで、光合成が盛んになって成長が速くなるというわけだ。また発芽や開花も660nm前後の光で促進される。青色LEDの光の波長は450nm前後だが、植物の発芽や葉緑素の合成には420~470nmの光が必要だ。赤色と青色の両方を使うことで植物を効率よく育てることができる。以前は蛍光灯や白熱灯も使われていたが、LEDは寿命が長くて消費電力が少なく、熱線を出さないので葉焼けを起こさず育てることができる。なお、植物が緑色をしているのは、緑の波長だけが植物の表面で反射されるため。
<漁業・農林分野でも進む応用>
青色LEDはイカ釣り漁船にも利用され始めている。イカは400~550nmの光によく反応するため、従来からイカ釣り漁船では集魚灯を用いてきた。強い光で照らすために発電用燃油の消費量も多かったが、青色LEDに置き換えることで消費量を減らすことができる。
静岡県の農林技術研究所果樹研究センターでは、収穫したミカンをカビから守るために青色LEDが使えるのではと研究を進めている。昨年の調査でミカンの腐敗の速度が、通常の半分以下に抑えられたという。実用化に向けて、効果的な照射方法などを検討している。
さらに驚きなのが、「青色光を当てることで昆虫が死ぬ」という、昨年12月10日に東北大の掘雅敏准教授が発表した研究成果。昆虫の種によって効果的な光の波長が異なるが、その効果は卵、幼虫、さなぎ、成虫のいずれの段階でも得られることが明らかになった。これを応用すれば、青色LEDによる害虫駆除装置の開発も期待できる。12月9日付の英オンライン科学誌のサイエンティフィック・リポーツに掲載された。