ヤンバルクイナなど絶滅危惧3鳥の全ゲノム情報を解読
国立環境研究所、酪農学園大学、京都大学は5日、絶滅危惧鳥類であるヤンバルクイナ、タンチョウ、コウノトリの3種について全ゲノムの塩基配列解読に成功したと発表した。今後、ゲノム情報を活用し、保護対策や個体数の回復に向けた取り組みが期待される。
冷凍細胞サンプルから解読
国立環境研究所では、国内の絶滅危惧野生動物種の皮膚などから培養した細胞や組織を長期保存用タンクの中で冷凍保存している。冷凍した細胞は、個体数が減少した原因の解明や個体を増やすための研究などに利用することが可能で、2015年10月までに保存したサンプルは
ヤンバルクイナは沖縄県の北部にのみ分布するクイナ類。解読に使用したDNAは、2010年沖縄県国頭村で回収されたメスの死亡個体の筋組織、および2012年同地区で回収されたメスの死亡個体に由来。タンチョウは日本国内では北海道東部に分布する大型のツルで、日本国内の個体数は増加傾向にあるが、大陸の個体数は減少傾向にある。DNAは、2007年北海道標茶町で保護されたメス個体に由来。コウノトリは大型の水鳥で、日本国内の在来個体群は1971年に野生絶滅した。DNAは、2013年よこはま動物園ズーラシアより提供されたオスに由来している。
研究の基盤整う
現在、ゲノム解読に必要なコストが低下し、多くの生物種のゲノムが解読され、生物間での比較や進化の過程の解明、病気の感染や予防、保全に向けた研究などが行われている。鳥類では、70種のゲノムが公共データベースに公開されており、今回対象とした3種は現在飼育下で繁殖が行われている。野生下のように多様性を維持しながら、効率的に繁殖を行うために今回のゲノム情報の活用が期待されている。ゲノム解析の専門家によると「多様性維持に活用するためには、個体ごとの違いや遺伝子の機能を明らかにする必要がある。今回、1個体のゲノムを解読したことで、今後の研究の基盤が整ったと言えるのでは」としている。
今後も環境試料タイムカプセル棟で保管されている希少生物のゲノム解析を実施し、今後5年で10種以上のゲノム情報を公表する予定。
(写真はイメージ)