人工光合成の実現に向け、天然触媒に似た化合物の合成に成功
植物が光合成で水を分解する際の触媒に似た化合物の合成に成功したと、岡山大学の沈建仁教授らのグループが5月8日、米科学誌サイエンスで発表した。植物のように太陽光で水を水素イオンと電子に分解できる触媒を合成できれば、二酸化炭素を「資源」として用いて有機物を生みだす「人工光合成」の実現に一歩近づく。
合成した化合物は、葉緑体に含まれる天然の水分解反応の触媒であるMn4CaO5クラスターと同じくゆがんだ椅子型構造をしており、人工的な酸化剤によって天然触媒と同じように1電子ずつ酸化され、天然触媒と同じような反応中間体が得られた。しかし、水を分解することはできていない。合成した化合物と天然触媒とで、ゆがみの位置に違いがあるのが原因とみている。今後は天然触媒のゆがみの位置を再現するなどの改善を重ね、水を分解できる人工触媒の実現を目指す。
沈教授は「これこそが本質的に大切だ」と信じ、20年かけて天然触媒の構造解析に取り組み、2011年にゆがんだ椅子型構造であると突き止めた。サイエンス誌の「2011年の科学10大成果」の1つにも選ばれている。