縄文人は東アジア人と比べ、遺伝的に特異な集団だった!
国立遺伝学研究所および総合研究大学院大学の斎藤成也教授らは、福島県北部にある三貫地貝塚から出土した3000年前の縄文人の奥歯からDNAを抽出し、核ゲノムの一部について解読に成功。縄文人が現代の東アジア人と比べて遺伝的に特異な集団であったことが明らかとなった。これまで縄文人のDNAは、ミトコンドリアDNAの情報しか得られていなかった。今回はその数千倍にあたる核ゲノムのDNA配列1億1500万塩基対を決定した。この研究成果は、日本人類遺伝学会の英文論文誌『ジャーナル・オブ・ヒューマンジェネティックス』電子版に掲載された。
このゲノム情報を現代人と比較したところ、大きくアフリカ人、西ユーラシア人、東ユーラシア人にわかれる中で、縄文人は東ユーラシア人にもっとも近かった。縄文人と東ユーラシア人だけで比較したところ、ヤマト人(東京周辺に居住する日本人)は縄文人と中国人(北京周辺に居住する中国人)の中間に位置し、ヤマト人はこれら2集団の混血であるといえる。さらに、日本列島3集団(アイヌ人、オキナワ人、ヤマト人)と中国人を比較した場合、縄文人はアイヌ人にもっとも近く、ついでオキナワ人、ヤマト人、中国人の順となった。
縄文人が現代人の進化的多様性の中でどこに位置するのかを推定するために、東ユーラシアの現代人5集団、西ユーラシアの現代人5集団、パプアニューギニア人、南米先住民、アフリカの現代人2集団のほかに、シベリアの古代人2個体とデニソワ人も加えた系統樹を作成した。その結果、東ユーラシアの現代人5集団がひとつのグループにまとまり、それらの共通祖先集団と南米先住民がまとまった後に、縄文人、パプアニューギニア人、シベリアの古代人1がこの順でグループに加わった。
南米先住民より縄文人が後ということは、新大陸に人類が渡っていったとされる1万5000年ほど前よりもさらに前に縄文人の祖先集団は分岐したということであり、きわめて古い系統であることを物語っている。また、縄文人の系統からヤマト人への混血があったことも推定され、ヤマト人に伝えられた縄文人ゲノムの割合は15%程度であることが明らかになった。
今回、縄文人の核ゲノムの一部が解読されたことによって、縄文人が現代の東アジア人と比べて遺伝的に特異な集団であったことが明らかとなった。今後、縄文人ゲノムデータを充実させ、それらを比較解析することによって、縄文人のたどった進化史が明らかになり、日本列島人の起源と成立を知ることにつながると期待される。
画像提供:総合研究大学院大学