メンデルが実験に使った「豆」 緑化の原因を北大が解明
北海道大学の研究グループが、植物が緑色から他の色に変化する原因となる物質を特定した。これにより、遺伝の法則を発見したメンデルが実験に利用していた薄茶色と緑色の豆の違いを分子レベルで説明できるようになった。この研究は7日、米科学誌『ザ・プラント・セル(The Plant Cell)』の電子版で公開された。
植物が色づく仕組み
植物は光合成のため光を吸収するクロロフィルという物質を持つため緑色をしている。一方で植物はクロロフィルを分解する能力を持っており、葉にたまっている栄養分を幹や種子に利用するためにクロロフィルを分解し、その結果として葉が色づく。秋に樹木が紅葉したり、稲が収穫期に黄金色に変化したりするのはこのためだ。クロロフィルはマグネシウムと結合しており、このマグネシウムが外れることでクロロフィルの分解が始まることが知られているが、マグネシウムを外す物質は特定されていなかった。
今回、研究チームは老化する時期になっても緑色を保つ変異を持った植物の原因遺伝子SGR (Stay-Green)に注目。シロイヌナズナを使って実験をしたところ、クロロフィルをSGRタンパク質と反応させると、クロロフィルが分解することが分かった。また、SGRタンパク質を大量に作るように作成した植物でも葉の中でクロロフィルが分解され、葉が黄色くなることから、SGRがマグネシウムを外してクロロフィルの分解を制御する機能を持っていることが分かった。
メンデルが「遺伝の法則」発見に使った豆
メンデルは、エンドウマメの背丈や豆の形など7つの特徴に着目し、異なる特徴を持つエンドウマメを交配させたときにその子孫がどのような特徴を持つかを観察して、1865年に「遺伝の法則」を発見した。メンデルが注目した特徴の一つが豆の色(薄茶色と緑色)で、豆が緑色になる原因がSGRであることは10年ほど前から知られていた。今回、SGRの機能が解明されたことで、メンデルが使った緑色の豆は、クロロフィルからマグネシウムが外れないためだという分子レベルの原因が明らかになった。
今後、今回の発見が植物の老化や紅葉のメカニズムの解明に繋がることが期待される。また、このようなクロロフィルからマグネシウム、つまり有機物から金属を外すという反応は極めて珍しいため、新しい反応機構の発見になる可能性があるという。
(写真はイメージ)