【ノーベル賞2016】生理学・医学賞に東工大栄誉教授の大隅良典さん
ノーベル生理学・医学賞の今年の受賞者が3日に発表され、東京工業大学栄誉教授の大隅良典さんが選ばれた。「オートファジー」という細胞の自食作用の仕組みを解明する研究が評価された。日本がけん引してきた研究分野で、単独での受賞となる。
日本人のノーベル賞受賞は25人目で、3年連続。生理学・医学賞では、利根川進さん、山中伸弥さん、大村智さんについで4人目の受賞となる。単独受賞は利根川進さん以来29年ぶり。授賞式は12月10日にスウェーデンの首都ストックホルムで行われる。
オートファジーとは、細胞内でたんぱく質がリサイクルされる仕組みのこと。毎日食事から摂取しているたんぱく質は細胞内でアミノ酸に分解され、これを材料にして必要なたんぱく質が随時合成されている。摂取しているたんぱく質が1日70~80gである一方、体内で合成している量は300gになる。これは摂取したたんぱく質だけでなく、自身の細胞内で不要なたんぱく質を分解して再利用する「オートファジー」が存在するため。分解と合成の平衡が保たれ、生命が維持されているという。
オートファジーにはもうひとつ、変質したたんぱく質やミトコンドリアなどのゴミが細胞内に溜まってしまわないように掃除する役割もある。パーキンソン病など一部の病気はオートファジーに関する遺伝子がうまく機能していないことがわかっている。大隅さんは、酵母を使った実験でオートファジーに関わる遺伝子を明らかにした。
午後8時からの記者会見では「基礎生物学者としてこの上もない幸せなことだ」と喜びのコメント。また「基礎研究は1人でできるものではない」とし、水島昇氏らをはじめとした研究者とも「栄誉を分かち合いたい」と話した。東京大学教授の水島昇さんは、大隅さんとともに2013年のトムソン・ロイター社の引用栄誉賞に選ばれている。オートファジー分野で酵母を中心とした研究から動物細胞での研究に拡張した。
また、基礎科学の重要性も強調。「サイエンスは、どこに向かっているかわからないというのが楽しいところ。そういうことを受け入れる社会的な余裕が大切。見守ってくれる社会になったらいいと思っている」と話した。
4日に発表される物理学賞では、同じ東京工業大学教授の細野秀雄さんや東京大学教授の十倉好紀さんが日本人の候補者として注目されている。
参考記事
【ノーベル賞2016】知っているようで、意外と知らないノーベル賞(2016/09/28)
ノーベル賞候補者に日本人3人 トムソン・ロイター(2016/09/26)
〔冒頭の写真は、3日夜の記者会見(東京工業大学大岡山キャンパス)〕