90歳で末期がん診断 全米を旅した「ミス・ノーマ」
米国ミシガン州出身のノーマ・ジーン・バウアーシュミットさんは、67年間連れ添った夫を亡くした2日後、子宮がんの診断を受けた。ステージ4の末期がんで治癒不可能の状態。しかし手術か化学療法、または放射線治療を勧める医師に、ノーマさんはこう告げたという。「私は90歳です」、「そういうことならば、旅に出たいと思います」。
2015年8月、こうしてロードムービーさながらのノーマさんの旅、「ドライビング・ミス・ノーマ」はスタートした。息子のティムさんと、その妻レイミーさんとともに、大型キャンピングトレーラーに乗り、米国中をめぐる旅に出たのだ。その様子はレイミーさんによってフェイスブック上に「ドライビング・ミス・ノーマ」のタイトルで公開され、ノーマさんの、人生を最後まで楽しむ姿勢と生きる勇気に、45万人を超えるファンが注目するようになった。フォロワーの中には、ブラジル人のベストセラー作家、パウロ・コエーリョの名前もあった。
ノーマさんは1年で2万1000kmの距離を旅し、32州75カ所を訪れた。マウントラシュモア国立公園やイエローストーン国立公園などの観光名所を訪れ、オレゴン州でヘーゼルナッツを摘み、メイン州ではロブスターを堪能した。行く先々で、地元のビールとケーキを楽しむことも忘れなかった。同行したレイミーさんは「彼女は日々健康になっていくかのようでした」と語っている。ABCテレビのインタビューでノーマさんは「旅行中で一番よかったのは、長年の夢だった熱気球に乗れたこと」と答えている。
「時計の針を戻すことはできない」「しかし、時計のネジを再び巻くことはできる」ノーマさんはフェイスブック上でこう綴っている。
ノーマさんは9月30日に91歳で亡くなった。ティムさんとレイミーさんは次のコメントでノーマさんの長い旅を締めくくった。「人生とは、何かをつかむことと手放すことのバランスだ。私たちは今日、手放す」
(独ヴェルト紙、米ピープル・オンライン版参照)
写真:Driving Miss Norma / Facebook