作者不明の絵画、葛飾北斎の作品と判明 オランダ国立民族学博物館
オランダにあるライデン国立民族学博物館が所蔵していた、これまで作者不明とされてきた西洋画6点の作者が、葛飾北斎であることが判明した。長崎市で開かれていた「第10回国際シーボルトコレクション会議」の最終日である10月22日、同館のシニア研究員であるマティ・フォラー氏が、「シーボルトと北斎:ブランデンシュタイン城文書から特定する新出北斎6点」の中で発表した。
今回新たに北斎の作品だと判明したのは、江戸時代に長崎の出島にあったオランダ商館に医師として来日していたシーボルトが、オランダに持ち帰った作品。和紙に江戸城や富士山が描かれた日本橋の様子や、雪が降る増上寺と赤羽橋が描かれたものなど水彩画5枚と石版画1枚。船が水面に映る様子や月明かりに伸びる旅人の影、画面の3分の2を占める大きな空、輪郭を縁取らずに描いている点など、当時の日本画にはない西洋画の特徴を備えている。
また、ドイツのヘッセン州シュリュヒテルンにあるブランデンシュタイン城では、シーボルトの子孫が保管していたシーボルト直筆の目録が2年前に見つかった。「北斎が我々のスタイルで描いたもの」との記述があるのをフォラー氏が確認した。絵の特徴も細かく記されていたという。
当時、長崎のオランダ商館長は4年ごとの江戸参府のたびに北斎のもとを訪れ、人々の暮らしぶりを描いた作品を依頼していた。シーボルトも1826年に商館長に随行して江戸に上った際、北斎らと面会している。
ライデン国立民族学博物館には今回新たに判明した6枚のほか、「端午の節句」など北斎らの肉筆画と認められた11枚も保管されている。
画像提供:ライデン国立民族学博物館(Collection Nationaal Museum van Wereldculturen. Coll.no. RV-1-4262)