東京メトロ、「鉄道車両用の操舵台車の発明」で2015年度「発明賞」
東京メトロ(東京都台東区)は、公益社団法人発明協会が主催する2015年度全国発明表彰において「鉄道車両用の操舵台車の発明」で「発明賞」を受賞した。全国発明表彰は、1923年に我が国の科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的に始まって以来、多くの発明を表彰してきた。今年度の表彰式は17日にホテルオークラ東京で行われる。この発明は鉄道車両用台車が急曲線においても優れた走行性能を発揮できる独創的な技術である。
鉄道車両1両につき2台配置される鉄道台車には、2組の車輪・車軸が装着されていて、この車軸は普通は台車枠に固定されている。そのため曲線通過時でも車軸が平行であり、車輪とレール間に大きな左右方向の力(横圧)がかかり騒音が発生する。
操舵台車は、曲線通過時にレールの曲線に沿うように車軸の位置を調整する操舵装置を備えた台車である。古くから研究・開発されたが、構造が複雑になるためこれまで国内での実用化は一部の特急車両に限られていた。
この発明では、1両の台車の内側の2組のみに操舵装置をつけることで、つまり4組の車軸のうちの内側2組だけを操舵可能にすることによって、比較的単純な構造で優れた曲線通過性能を持てるようにした。進行方向に対して前側の台車では、後軸を操舵することで台車全体の曲線通過性能を向上させる。また、後軸の操舵により、曲線中で横圧や騒音の原因となる反操舵方向の回転力を低減させて、台車全体の曲線通過性能を向上させている。一方の前軸にモータ、駆動装置を配置することにより、駆動力の確保と曲線通過性能の向上を両立させた。
この発明技術を適用した操舵台車付の車両を急曲線区間で試験走行させたところ、横圧は30%と大幅に低減され、騒音も大幅に低下した。その他、レール振動の低減、消費電力の低減、走行抵抗の低減が確認され、操舵台車導入により急曲線の多い地下鉄線内をさらにスムーズに走行させることが可能となった。