量子もつれが時空を形成 ホログラフィー原理で相対性理論と量子力学を統合
「量子もつれ」が時空を形成する仕組みを具体的な計算で解明したと、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の大栗博司主任研究員とカリフォルニア工科大学のマチルダ・マルコリ教授らが5月27日に発表した。物理学者と数学者の連携による成果。相対性理論と量子力学を「ホログラフィー原理」で結び、重力を含めた究極の統一理論につながるのではと期待されている。米物理学会誌「フィジカル・レビュー・レター」に近く掲載予定。
相対性理論と量子力学の統一に関して、「量子もつれ」が深く関わっていることが知られていた。「量子もつれ」とは、一方の粒子の量子状態と他方の粒子の量子状態を切り離して考えることができず、一方の量子状態を測定すると、空間的に離れた場所にある他方の粒子の量子状態も定まってしまうもの。また「ホログラフィー原理」とは、時空内のすべての情報は、その内部ではなく表面に蓄えられるという超弦理論の性質。今回、「量子もつれ」と時空の微視的構造との関係を「ホログラフィー原理」を用いて具体的な計算で明らかにし、一般相対性理論から導き出される重力現象の基礎となる時空が、「量子もつれ」から生まれる仕組みを解明することができた。
現在の宇宙には、「電磁気力」「強い力」「弱い力」「重力」の4つの力が存在している。宇宙がビッグバンではじまった直後は1つの力に統一されていたが、ビッグバンの10-44秒後(1京×1京×1兆分の1秒後。宇宙の温度は1032K、1京×1京Kくらい)に重力がわかれ、10-38秒後(1京×1京×100万分の1秒後。宇宙の温度は1029K、1京×10兆K)に強い力がわかれ、10-11秒後(1000億分の1秒後、宇宙の温度は1015K、1000兆K)に弱い力と電磁気力がわかれたと考えられている。これまでに、量子力学を基礎にした理論で「電磁気力」「強い力」「弱い力」の3つの力は統一的に説明できているが、「重力」は統合できていない。「重力」は時空の性質として相対性理論で説明できるため、量子力学と相対性理論を統合することが期待されている。
画像出典:東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構