【コラム】AIは人間と一緒に新しい「教え方」をつくれるか?(前編)
2016年は、人工知能(AI)に関する報道が多くなされた年だった。自動運転から、医療、司法に至るまで、AIが関わる分野は多岐にわたる。その報道のたびに必ず出てくるのが、「人間はAIに取って代わられるのか」という疑問だ。そして教育分野の先進事例でも講師を指導するAIが登場しようとしている。
AIが教師の「教え方」を改善指導
12月26日付の英ガーディアン紙のリポートによると、算数のオンライン教育を行う企業サード・スペース・ラーニング(Third Space Learning)が科学者と提携。授業を成功に導く要因を特定し、さらには授業の「教え方」を改善するためにAIが使えるかどうか調査しているという。
同社は、英国、インド、スリランカを拠点に、英国内の学校に通う生徒達に教育サービスを提供する企業だ。同リポートの事例では、小学校の生徒が、インドおよびスリランカにいる講師から毎週1対1の算数指導を受けている。指導時間は45分で、生徒と講師はヘッドセットとコンピューター上で共有しているホワイトボードを通してやり取りをする。この際、お互いの姿を見ることはできない。
同社はこれまで、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の科学者達と共同で、「良い教師」や「成功した授業」を実現する要因を特定するため、自社が提供する個別指導の10万時間分の音声と記述データを解析してきた。
CEOのトム・フーパー(Tom Hooper)氏は「我々は、得られる知見をもとにレッスンの最適化を目指す。これまでのレッスンを記録したデータを用いて、“教え方”を改善するためにAIを導入しようとしている」と方針づけており、2017年からは、AIソフトウェアが講師の指導内容をモニターし、改善まですることを目指した取り組みが始まるという。
(後編に続く)
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