ドイツ・ロマンチック街道で寄り道(2) ディンケルスビュール
ドイツ南部、ヴュルツブルクに始まり、ノイシュヴァンシュタイン城で名高いフュッセンへと続く「ロマンチック街道」。美しい街並みゆえに人気の観光名所である同街道の町々を、春の訪れに先駆けて穴場スポットとともにご紹介する。
ロマンチック街道の中でも中世の面影を残す場所として人気の高い3つの町がある。それがローテンブルク、ディンケルスビュール、そしてネルトリンゲンだ。ロマンチック街道を観光バスに乗って駆け足で回る観光客を揶揄して、「観光客は、ローテンブルクに泊まり、ディンケルスビュールで食事をし、ネルトリンゲンでトイレを使う」と言うらしい。
今回紹介するのはその「中世都市御三家」の中の一つ、ディンケルスビュール。町の名前に冠されたディンケル(Dinkel)とは、小麦の古代品種であるスペルト小麦のこと。ビュール(Bühl)は丘という意味だ。つまりディンケルスビュールは「麦が丘」とでもいうような、のどかで牧歌的な名前を持つ町なのだ。3本のディンケルの穂をあしらった町の紋章もかわいらしい。
昔からドイツ南部の一部地域で生産されてきたディンケルは、痩せた土地でも育ちやすく、肥料を多く必要としない、たくましい品種なのだという。ディンケルのパンは小麦に比べて粘り気が少なく素朴な味わいだ。
そんなちょっと地味な存在だったディンケルだが、近年健康食品として見直されて全国的に人気が高まっている。ディンケルスビュールに唯一残る、昔ながらの自家製パン工房でパンを焼くベッカライ・アイヒナーは1902年の創業。ディンケルのほか小麦やライ麦も、地元産のものだけを使って伝統的なパンを焼き続けている。お昼時にはさまざまな具材を挟んだサンドイッチもあり、お店の中のカフェスペースでコーヒーを楽しむこともできる。
ディンケルスビュールに唯一残る、自家製パンを売るパン店「ベッカライ・アイヒナー」
同じ通りにあるホテルの朝食にも「ベッカライ・アイヒナー」のパンが登場
城壁に囲まれた旧市街全体が文化財として保護指定されているディンケルスビュール。中世の面影が色濃く残るこの町を訪れたなら、素朴で味わい深いディンケルのパンをぜひ味わってみてほしい。
Altstadtbäckerei Eichner
Hans-Jürgen Eichner
Segringer Str. 36
91550 Dinkelsbühl
7:00-20:00(日曜8:00-19:00)
http://www.baeckerei-eichner.de/