ものの探し方の違いは、文化の違いから生じる 京大
京都大学などの国際共同研究チームは、日本人と北米人の視覚情報処理の特徴を比較し、文化の違いによってものの探し方に差が存在する可能性を示した。研究成果は、米学術誌『コグニティブ・サイエンス』に3月25日付で掲載された。
文化の違いが、行動やものの考え方に強く影響を与えることはこれまで多くの研究で証拠が挙げられてきた。一方で、文化がより単純な視覚情報処理にも影響を与えているかどうかを調べた研究では、これまでさまざまな、一貫しない報告がされており、明らかにされていなかった。
今回、京都大学こころの未来研究センターの上田祥行特定助教授らの国際研究チームは、視覚情報処理と文化背景の関係性を調べるため、北米人と日本人を対象に調査した。実験では、思考や推論といった文化的な違いが出やすいプロセスが入らないよう、単純な長短の線分や円と棒の円、垂直線と斜線といった幾何学図形を用いて視覚情報処理テストを実施。短い線が複数ある中に長い線を見つけるなど、1秒程度で目的とした図形を探すときの特徴を調査した。
このテストでは、短い線が複数ある中で長い線を見つけるときは、逆に長い線の中にある短い線を見つけさせるパターンのときよりも比較的見つけやすくなる「探索非対称性」という特徴があり、北米人では顕著にみられた。一方、日本人ではパターンを入れ替えても大きく変わらなかった。また、扱う図形の種類によっては北米人よりも日本人のほうが顕著にみられるパターンもあり、この特徴は北米人と日本人でそれぞれ一貫していた。
今回の研究から、思考や推論が関与しない、より初期の視覚情報処理にも文化差が存在することが示唆された。基本的な視覚認知の様式に文化が影響を与えていることを示しており、今後、人の注意のモデルを拡張させるなど、脳の解明に貢献する可能性を持っているという。研究チームは今後、どのような環境のなかで文化特有の視覚情報処理を身に付けるのかを研究していくとしている。
(写真はイメージ)