農山村再生、地方移住で根付く「若者力」がカギ 次世代農業者に期待
NPO法人中山間地域フォーラムは8日、日本農業新聞と共催で設立11周年記念シンポジウム「農山村再生と若者力―農業の新たな位置づけ-」を東京大学弥生一条ホール(東京都文京区)にて開催した。
総務省が国の事業として都市部の若者を任期付きで地方へ派遣する「地域おこし協力隊」などの取り組みにより、近年、一部の農山村では都市の若者による田園回帰が起こり、若者移住が進んでいるという。今回のシンポジウムでは、地域に根付きつつある移住者が農山村再生にどのような力を発揮しできるのかについて、実際に各地で農業に従事する若手3人による実践報告やパネルディスカッションが行われた。
高知県安芸市の小松圭子さんは、都内大学に進学後、愛媛新聞社の記者を経て、結婚を機に限界集落の高知県安芸市畑山へ移住。限界集落とは、人口の半数以上を高齢者が占め、経済的・社会的な共同生活の維持が困難になっている集落のこと。現在は畑山で養鶏を中心とした事業を営んでいる次世代農業者の一人だ。日々の暮らしを新聞や雑誌、SNS等で発信している。「限界集落ということで、色んな意味で限界を感じる一方で、特産品の情報をうまく伝えることでお客さんが足を運んでくれている。このような可能性がいろんな地域にもあるのではないかと思う」と小松さんは語った。
また、地域おこし協力隊員を経て富山県高岡市の農業組合法人に就職した中川雅貴さんは「最初は生活習慣の違いに戸惑ったが、自分が集落の雰囲気に合わせた。地元の人も気を遣ってくれて共通理解ができた」と移住当初の体験を語った。
法政大学の図司直也教授は「新しく農村に移り住む、また農業に携わる若者たちのサポート体制の在り方も今後の論点になってくる」と語った。
左から、熊本県阿蘇市で実家の家業を継いで稲作と畜産に従事する橋本凌さん、中川さん、小松さん