今日は土用の丑! 絶滅危惧種ニホンウナギの保護と暑い夏の乗り越え方
照り返す太陽、澄み渡る青空とセミの声。日本の暑い夏の風物詩の一つが、ウナギの蒲焼きだ。
土用の丑といえばウナギだが……
7月25日、今日は土用の丑の日。「土用」とは古代中国の「五行説」において、季節の変わり目である立春、立夏、立秋、立冬の前18日間を呼び、その期間中12日に1回訪れる十二支の「丑」の日が「土用の丑の日」となる。今年の夏は、今日と8月6日の2回、土用の丑の日を迎えるようになる。
豊富なたんぱく質やビタミン、カルシウム、鉄分を含む栄養豊富なウナギは、古くは「万葉集」の時代から強壮食品として食されてきた。
なぜ土用の丑の日にウナギを食べるようになったのか。一説には、江戸時代に、暑くてウナギが売れないことを嘆いたウナギ屋が、稀代の天才学者平賀源内に相談し、土用の丑の日にウナギを食べて暑い夏を乗り切るという習慣を広めたという。
保護の対象に
そんな日本の食文化に浸透したウナギに、近年は異変が起きている。スイスの国際自然保護連合(IUCN)は、2014年6月に絶滅の恐れがある野生生物を指定する「レッドリスト」にニホンウナギを加えたことを公表。このリストは法的拘束力はないものの、野生動物の国際取引を規制するワシントン条約が保護対策の参考としており、資源量が回復しなければ輸出入の規制と取引価格の上昇を招くことが懸念される。
ウナギの消費量が世界一とされる日本にとって、資源保護のための漁獲量の制限は必至となった。当該発表直後の9月に開催された日本、そして日本にウナギを輸出している中国、台湾、韓国との会議では2015年の稚魚(シラスウナギ)の養殖量を2014年比で2割減らす規制導入で合意するなど、国際協調による資源保護を進めている。国際協議を踏まえ、日本国内では、ウナギ養殖の管理団体である全日本持続的養鰻機構が2016年10月に設立され、ウナギ資源管理の促進や適切な管理のもとでの養殖されたウナギの利用を促進している。
待ち望まれる「完全養殖」技術
養殖用の稚魚であるシラスウナギの捕獲量の減少から、ウナギの完全養殖、つまり人工的に稚魚を生産する技術の開発と確立が待ち望まれている。2010年には水産総合研究センターがウナギの受精卵をふ化させて成魚にし、再び産卵させて稚魚を得ることに成功したと発表した。生まれたときにオス、メスの区別のない稚魚は、何もしないと大半がオスになってしまうため、ホルモンを餌に混ぜてメスを作り出す必要がある。また、稚魚を一度に安定して誕生させ育てることが難しいなど、完全養殖により安定して食卓にウナギを供給することはまだ課題が多いようだ。
今年は「土用餅」で暑気払い
絶滅危惧種ウナギを守るため、もしくは値段が高騰したウナギに手が届かないためか、代替品で土用の丑の日を乗り切ろうという動きもみられる。都内のスーパーでは24日、「小豆あんで暑気払い」と題して、あん団子や土用餅(餅生地をこしあんで包んだもの)を売り出した。あんこには厄除けの力があり、弱った体から厄をはらい健康に働けるようにといういわれがあるという。
一年でもっとも暑い時期である夏の土用の丑の日。ウナギの保護も念頭に置きながら、暑さを乗り切る工夫をしていきたい。
参考記事
ウナギ不足解消の鍵となるか?! インドネシアの養殖ウナギに期待(2015/08/05)