6年越しの再挑戦へ、金星探査機「あかつき」
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は5日、今年12月7日に予定している金星探査機「あかつき」の金星周回軌道への再投入に向けた一連の軌道修正に成功したと発表した。
「あかつき」は2010年5月21日に種子島宇宙センターから打ち上げられ、もともとは同年12月7日に金星周回軌道に投入される予定だった。しかし、軌道制御用の主エンジンの逆噴射中に燃料供給部品の動作不良で逆噴射が中断され、当初予定の2割程度しか減速されず太陽周回軌道に入った。その後の軌道追跡の結果、探査機は6年後に再び金星に接近できる機会があると分かり、あきらめずに運用を続けてきた。
2011年9月に破損した主エンジンの噴射試験を行い、主エンジンが軌道制御に使えないことを確認。質量を少しでも軽くするため、10月に主エンジン用の酸化剤を廃棄。11月に姿勢制御用の小エンジンで10分間にわたる長時間連続噴射に挑戦し、今年12月に金星と再会する軌道に乗ることに成功した。
しかし、その後の飛行は「あかつき」には厳しい旅となっている。現在の太陽周回軌道は金星軌道のかなり内側に食い込んでおり、最も太陽に近づく地点では、設計時に想定した太陽からの熱入力をはるかに上回る。金星周回軌道上での熱入力は1m2あたり2649Wであり、設計時の想定は最大2800Wだった。しかし現在の軌道で最も太陽に近づいた時に受ける最大熱入力は3655Wと、設計時の想定を3割も超えている。「あかつき」はすでに8回もこの灼熱地獄をくぐり抜け、今月29日にもう1回くぐり抜けねばならない。
灼熱地獄をくぐり抜けて12月に金星との再会を果たしても、主エンジンが使えないので姿勢制御用の小エンジンだけで金星周回軌道に乗らなくてはならない。本来姿勢制御に用いるエンジンなので、想定にない長時間連続噴射をする必要がある。想定にない運用なので、やってみなければわからない誤差要因が含まれるが、電波で往復15分もかかるところにあるので、リアルタイムで地球からの指令が下せない。何が起きても探査機は自分自身で判断して不測の事態に備えなければならない。
「あかつき」のプロジェクトマネジャーであるJAXAの中村正人さんは「金星周回軌道再投入は決して簡単な仕事ではありません。むしろ成功したら、神に感謝すべき、大きなチャレンジです。誰も楽観はしていません。それでも、我々『あかつき』を宇宙に送り出した担当者は、この探査機に再び金星を探査する喜びを与えたいと願っています」と述べている。
画像提供:JAXA