ご当地自慢を探せ!(26)つゆにそばを投じる 信州奈川「とうじそば」
信州・長野といえば、戸隠の戸隠そばや開田高原の開田そばなど「信州そば」で名高い、そばの適産地だ。野麦峠にほど近い、松本市奈川に「そばの里奈川」がある。長い山道が続く途中に、広い駐車場が突如現れる。筆者が訪れたこの日は、お盆期間ということもあってか、多くの車が止まっていた。
広い店内は右手が土産屋、左手が食事処になっていた。テーブル席の奥には座敷があり、ガラス窓越しにそば打ちの様子を見ることもできる。席について、この店の名物「とうじそば」(2人前2500円)を注文。すぐに目の前にカセットタイプのガスコンロが置かれ、一緒に出された漬物をいただきながら、そばを待った。待つこと5分、湯気の立ったつゆがたっぷり入った鉄鍋と、一口サイズに小分けにされてかごに盛られたそばが登場し、カセットコンロの上にセットされた。
とうじそばは、奈川地域に古くから伝わる郷土料理。そばをつゆに浸ける事を「湯じ」といい、これが「とうじ」の語源と言われているそうだ。奈川地域では投げる汁と書いて「投汁(とうじ)」と読み、これにはひたし・あたためるという意味もあるという。手打ちのそばを寒い時期にもおいしく食べようと考えて生まれた食べ方で、奈川地域では冠婚葬祭等のごちそうとして、このとうじそばが振る舞われるという。
カセットコンロに火をつけ、山菜やきのこ、鶏肉などが入ったつゆを温める。その横では、小分けされたそばを竹で編んだ投汁カゴに取り、鉄鍋の中の温かいつゆにつけて軽くゆがき、お椀に移していただく。温められたそばは香りが立ち、あっさりした醤油味のつゆはそばの香りを邪魔しない。歯触りのいい山菜と小さく刻まれた鶏肉も旨味があるが、全体的に軽い口当たりで、どんどん食べ進められてしまう。
長野県は昼夜の寒暖差が大きく、水はけのよい山地の畑がそばの栽培に適しているため、良質のそばが作られるという。「信州そば」と一口に言っても、そば粉の種類や産地、そばの実の磨き方やつなぎに何を使うかなど、挽き方・打ち方・作り方によって、それに加えて、時期や食べ方によって、その名前も品もさまざまだ。信州・長野県内には数多くのそばの産地があり、地域や村ごとに特色あるそばを味わうことができるという。長野県に訪れた際には、そばの食べ歩きをしてみては。
【店舗情報】
そばの里奈川
長野県松本市奈川1173-14
https://www.nagawa-sinko.jp/sobanosato
TEL:0263-79-2906
営業時間:10:00~16:00 ※そばがなくなり次第終了(火曜定休)