「超温暖化」の終息に光合成生物が貢献 東大などがメカニズム解明
東京大学、千葉工業大学、高知大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究グループは、過去に地球で急激な温暖化が発生した際、地球がどのような反応をして温暖化が終息したのかを明らかにした。温暖化が起こるたび、海洋表層で光合成するプランクトンが増え、大気と海洋で二酸化炭素(CO2)を吸収してCO2濃度が下がったという。今後、数万年スケールで地球環境にどのような変化があるかの予測につながるという。成果は12日付の英科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』に掲載された。
研究グループは、インド洋の深海堆積物を調べ、約5600万~5200万年前の前期始新世時代、急激で短期的な温暖化(超温暖化)が繰り返し発生していた時に堆積物がどのような構成になっていたかを解析。炭素同位体比の特徴からこの時期に超温暖化が発生していた痕跡を確認した。これまでも世界各地の海洋で前期始新世の超温暖化が確認されており、今回インド洋でも確認されたことから、このころ全地球的に超温暖化が起こっていたことが確実になった。
さらに、堆積物の中には超温暖化と連動して、生物に由来する硫酸バリウム(バライト)が増加していたことを確認。このことから、温暖化に伴って海洋中で光合成するプランクトンが増大し、大気・海洋のCO2に含まれる炭素を有機物に変換することで生態サイクルに取り込んだことが、大気中のCO2濃度を下げることにつながったという。
約5600万年前に発生した最も深刻な超温暖化の例でこのメカニズムが起こっていたことが先行研究で確認されていたが、今回、比較的小規模な複数の超温暖化でも確認されたことで、普遍的なメカニズムであることが明らかになった。
研究グループは、現在人類が放出している大量の温室効果ガスが地球に与える影響について、数万年スケールで予測する上で重要な知見となるとしており、今後は同メカニズムが始まるタイミングや温暖化からの回復にかかる時間などを調べることで気候変動の本質的な理解と予測精度の向上が期待されるとしている。
(冒頭の写真は、イメージ)