世界で広がるESG投資、2018年日本の立ち位置は?
2015年9月の「国連持続可能な開発サミット」で、2030年までの達成を目指す「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」が採択された。これを受けて、環境、社会に配慮したESG投資が注目を集めている。ただ、欧州でESG投資の残高が全運用資産残高の半分を超える中、日本は出遅れている状況だ。持続可能性への配慮を掲げる2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、日本の取り組みに注目が集まる。
ESG投資とは?
ESGとは、投資判断に環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に考慮した投資手法のことを指す。二酸化炭素(CO2)の排出量削減や化学物質の管理などの環境(E)、人権問題や女性の社会進出支援などの社会(S)、コンプライアンス運用や社外取締役の採用、情報開示などのガバナンス(G)に配慮した経営を行っている企業に投資をすることで、長期的かつ持続的な社会の成長を促す。「責任投資(Responsible Investment)」「持続可能な投資(Sustainable Investment)」とも呼ばれる。
ESGの考え方の起源は1920年代にさかのぼる。キリスト教の教会資金を運用する際、倫理観に反する投資は行わないという方針のもと、酒・たばこ・ギャンブル等に関わる企業を投資対象から除外したことに始まる。2006年に国連より「責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)」が発表され、ESG投資は、社会や環境の改善効果だけではなく、投資側にとっても長期的に優れたパフォーマンスが得られる投資手法として理解されるようになった。
日本では、2015年9月に世界最大の年金基金である年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)が、PRIに署名したことが注目された。GPIFは2017年7月に国内株式を対象としたESG指数を選定し、1兆円規模のESG投資を始めている。
世界のESG投資動向
ESG投資を普及するための国際組織であるGSIA(世界持続可能投資連合、Global Sustainable Investment Alliance)がまとめているリポートによると、世界におけるESG投資残高は約22.9兆ドル、全運用資産残高の26.3%であり、欧州やオーストラリアでは50%を越えている。一方、日本における運用資産残高は3.4%と低水準。同リポートは2年に1回発行されており、2018年の日本の数値改善が期待される。
ESGの投資方法として、GSIAは7つの手法を挙げている。ESG評価で問題のある企業を投資先から除外する「ネガティブ・スクリーニング」、ESG評価の高い企業に投資する「ポジティブ・スクリーニング」、株主として議決権行使等で投資先企業にESGの配慮を求める「エンゲージメント」などがある。
これからの日本の取り組み
東京オリンピック・パラリンピックでは、持続可能性への配慮を掲げている。競技施設の建設資材である木材やコンクリートの調達先、労働環境にも配慮が必要となる。近年、情報開示や検査の不正が相次ぐ日本、オリンピックに向けての取り組みに世界の注目が集まる。
(写真はイメージ)