ストレスフルな社会~体験型保養施設のススメ
甲府盆地を見下ろす山の斜面にある<フフ山梨>は、標高900m。敷地のどこにいても富士山の絶景が視界に飛び込んでくる。「保健農園ホテル」と名付けられた宿は、都会生活で乱れた心身のバランスを取り戻すのに絶好の場所だ。記者が妻と2泊3日した体験をリポートしたいと思う。
チェックインを済ませたら、<暖炉カフェ>(暖炉のある図書室)にてウエルカムドリンクの紫蘇茶をいただいて、ホテル生活のスタートだ。甘酸っぱい香りが口一杯に広がる。続けて、宿泊する部屋と館内の案内を受ける。2万坪の敷地に、わずか13室が回廊で結ばれて配置されているので、しっかり覚えておかないと迷子になりそうだ。
小休止の後、<体リセット>に参加。インストラクターに教えてもらいながら、ヨガマットとポールを使って、体の隅々までストレッチを行った。記者は、普段からジョギングとストレッチを行っているが、体験してみて、固まっている筋肉が多いのに驚いた。インストラクターによると、パソコン作業で、肩甲骨、鎖骨、首の周囲の筋肉を長時間緊張させるのに慣れてしまうと、固まっているのに気付かないそうだ。
<体リセット>が終わると夕食だ。地元でとれた野菜中心のコースメニューだ。野菜の一つ一つにパワーを感じる。宿泊室には、あえてテレビが置かれておらず、LANも使えない。夕食後は、虫の声を聞き、星を見るもよし、ワークスペースというコンセントと無線LANが使える部屋で仕事するもよしといったところだ。記者は、入浴したら、あっという間に眠気が襲って来て眠ってしまった。
2日目、朝7時から<ヨガ>に参加し、8時から朝食。そして、10時から、施設内の農園で<農業体験>。スタッフの指導で、宿泊客5人で、収穫を終えたキュウリの畝を解体し、耕運機で土をおこし、肥料と大根の種を蒔き、覆いをかける作業を行った。傍目からみると何気ない作業だが、実際、やってみると、思いのほか大変だ。「蒔いても芽が出ない種もあるので、1カ所につき、3粒ずつ蒔く」、「完全無農薬なので、毎朝虫をとるのが大変だけど、虫が来くるのは美味しいしるし」、「葉が幼いうちは虫が食べるが、成長すると苦味が出て虫が食べなくなくので、覆いをはずせる」など、スタッフの言葉には経験から来る含蓄がちらほら。作った野菜は、ホテル内の食事だけでは使いきれないそうで、フロント横の<天空マルシェ>で1円でも寄付をすれば好きなだけ持ち帰ることが可能だ。
作業後、着替えて、野菜カレーを食べる。一つ一つの野菜が、このように作られるということを体験すると、一層、価値を感じて美味しい。
午後は、ワークスペースで体験記を書き、持参した本を読む。雲がかかって見えなかったが、晴れていれば正面に富士山が見える。そして、17時から<体リセット>に参加。今日は、ボールを使ったエクササイズ。昨日とは違った場所をほぐせた。夕食を食べて、入浴するとすぐに就寝。
3日目、朝7時から<森の散策>に参加し、朝食、ワークスペースで過ごしたら、あっという間にチェックアウトの11時となった。名残惜しく、帰宅の途についた。
脳がストレスを感じると、コルチゾールをはじめ、多くのホルモンを介して、血糖値を上げ、血圧・脈拍を上げ、交感神経優位の態勢を作る。これによって、素早く、戦うことも、逃げることもできる。しかし、現代社会では、肉体で戦い、逃げて対応することはできず、ストレスに延々と耐え続ける状況が多い。交感神経優位を維持するためにコルチゾールが長期間分泌されると、海馬の神経細胞やグリア細胞が障害を受け、慢性疲労や抑うつ状態に至る。
記者(医師)は、想定外の変化が患者さんに起こると、職場にいなくても電話がかかってきて、急ぎ出勤することがあり、365日、ストレスが強いことを自覚している。今回、都会にある自宅と職場を離れて、大自然の中で、ネット環境もあえて整っていない場所で、健康な食事と適度な運動をすることとなった。そうすることで心身共に非常にリラックスし、元気になったのを感じた。
この施設は、臨床心理士や医師がプログラムを監修しており、希望すれば、自律神経バランス測定、アロマセラピー、整体といった個別メニューも充実している。
薬に頼らず、心身の疲労回復を目指す方にはお勧めだ。
保健農園ホテル フフ山梨
http://fufuyamanashi.jp/