蚊は叩いた相手を避ける 匂いで記憶

蚊は叩いた相手を避ける 匂いで記憶

蚊は叩かれると、叩いた相手の匂いを記憶し、次回はその匂いを避けるようになる。そんな研究結果が1月25日付の米科学誌『カレントバイオロジー』で報告された。

統括著者であるワシントン大学シアトル校のジェフリー・リッフェル教授は、「蚊が相手の匂いに嫌悪感を覚えると、昆虫などに対して最も効果的な忌避剤の1つであるディートへの反応と同じ命令で嫌悪反応を引き起こした。さらに、蚊は数日間、学習した匂いを覚えている」と述べている。

これまでの研究で、蚊が刺す相手を無作為に選んでいる訳ではないこと、また、夏期には鳥類、他の時期には哺乳類や鳥類を刺すことが知られている。リッフェル教授らは、蚊の刺す相手が学習によって影響を受けるかどうかについて知りたいと考えた。

最初に、特定の人、ラット、鶏の匂いと機械的衝撃を組み合わせて蚊を訓練した。機械的衝撃は、試験管を撹拌かくはんするのに用いるボルテックスミキサーを使用して、人が蚊を叩こうとしたときに起こる振動と加速度をシミュレートした。蚊は相手の匂いと機械的衝撃との関連を素早く学習し、その情報をどの方向へ飛ぶか決めるのに用いた。興味深いことに、鶏の匂いについては避けることを学習できなかった。

学習は、ミツバチからヒトまで多くの動物において、脳のドーパミンに依存する。ドーパミン受容体を欠く遺伝的に改変された蚊は、学習する能力を失った。このことから、リッフェル教授らは、ドーパミンが蚊の学習にも不可欠であることを示した。また、脳の嗅覚の中心にあるニューロンの活動を調べると、ドーパミンなしではそれらのニューロンは発火しにくく、蚊は匂い情報を処理する学習ができなくなった。

蚊がどのようにして相手を刺すのか、どのような習慣がそれらの行動に影響するのかを理解することで、今後より効果的な蚊の駆除法の開発につながると考えられる。

画像提供:ワシントン大学