AIでインフラのひび割れ自動検出 大林組が新手法

AIでインフラのひび割れ自動検出 大林組が新手法

建設最大手の大林組は5日、コンクリート表面のひび割れ幅と長さを高精度かつ短時間で自動検出する手法を確立したと発表した。富士フイルムの社会インフラ向け画像診断サービスと高性能カメラを利用し、従来のひび割れ自動検出技術と比べ作業時間は4分の1、写真撮影枚数は5分の1に低減できるという。高架橋やトンネルなどの大規模な土木建造物の維持管理での活用を見込む。

今回開発された手法のもととなった富士フイルムの画像診断サービス「ひびみっけ」は、もともと医療分野向けに開発した画像解析技術を社会インフラ用に新規開発したサービスで、写真を人工知能(AI)で解析することで、ひび割れやチョークの検出、写真の合成が自動でできるというもの。

大林組は、通常のカメラより撮影素子サイズの大きい高性能カメラで対象物を撮影することで画像解析に使える高品質な写真が撮影できるようにし、0.05mm以上のひび割れを100%検出、近接目視によるひび割れ幅の計測結果との適合率90%以上を実現した。撮影した写真をクラウド上にアップロードした後、数分でひび割れを検出できる。

また、高性能カメラを使用することにより、暗い現場や従来の2倍の遠距離からの撮影になってもひびの検出が可能になった。これにより、画像でのひび割れ検出が難しかった高架橋の床版や河川の橋脚などでも地上から撮影が可能になり、足場や高所作業車が不要となり安全で、かつ作業時間とコストを大幅に削減できる。

画像診断技術などを用いて、安全・迅速に点検をする方法の確立が急がれている背景には、老朽化したインフラの増加や点検コストの負担がある。例えば橋梁では、老朽化による通行止めや通行規制があった橋は全国で2500カ所以上に上る。国道交通省では、橋梁の定期点検は共用開始後2年以内に初回の点検を行い、2回以降は5年に1回の頻度で定期点検を行うことを基本としているが、維持管理費の削減や点検業務技術者の減少により、定期点検がままならない所も増えている。

画像提供:大林組(冒頭の写真はイメージ)