日本人はアルコールに弱い体質に「進化」 ゲノム解析で明らかに
理化学研究所の鎌谷洋一郎チームリーダーらが、日本人集団2200人の全ゲノムシークエンス解析を行い、世代を経るごとに周囲の環境に対応して変化する「適応進化」に関わる遺伝子領域を特定した。それによると、日本人の多くがアルコールに弱い体質に「進化」してきたことが明らかになった。英国のオンライン科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に、4月24日付けで掲載された。
2003年に完了したヒトゲノムプロジェクト以降、「病気と遺伝の関係」や「民族のルーツ」を探るためのプロジェクトが各国で進められている。日本でも、数千人規模での日本人のゲノム解析(1,2)が進められており、今回の研究は日本人という集団の適応進化(周囲の環境:気候や食べ物に対応してどのように変化してきたのか)に焦点を当てている。
今回、日本人集団2200人を対象に実施された解析では、低頻度で存在する遺伝的変異の分布を検討することで、過去数千年間において適応進化の対象となっていた4つの遺伝子領域を特定した。具体的には、アルコール脱水素酵素1B(ADH1B)遺伝子、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)領域、アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)遺伝子、セリン加水分解酵素様2(SERHL2)遺伝子だ。
さらに日本人集団において、病気の発症や臨床検査値の個人差に影響を与える遺伝的な違いと適応進化の関係を解析すると、飲酒量などアルコール代謝と、脂質(HDL・LDLコレステロール値)や血糖値、電解質(カリウム・ナトリウム)、タンパク質、尿酸値や痛風など栄養代謝に関わる形質が、日本人集団の適応進化の主な対象となっていることが分かった。
今回の研究は今後、日本人の歴史の解明や、遺伝的背景を考慮した健康の増進に寄与することが考えられる。また、より大規模な全ゲノムシークエンスデータが構築されれば、さらなる適応進化の解明が期待できる。