日本生態学会、特定外来生物ヒアリ侵入対策の要望書提出

ヒアリ簡易検出キットで早期防除 国立環境研究所が開発

国立環境研究所は8日、特定外来生物ヒアリを早期に発見するための、DNA分析によるヒアリ検出キットのプロトタイプを作成したと発表した。

2017年6月に尼崎市内でヒアリが発見されて以来、各地の国際港湾を中心にヒアリの上陸が次々と報告されている。ヒアリが定着・分布拡大した場合には甚大な経済被害が生じる恐れがあるため、これを防ぐためには、いち早くヒアリの存在を検出して防除する必要がある。しかし、ヒアリは体長が2.5~6mm程度しかないため、目視だけで日本のアリと区別することは難しく、今まではアルコール標本などを専門家に送付して、形態を顕微鏡で観察する以外に確認する方法がなかった。しかしこの方法は数日を要するため、より簡単に早くヒアリを確認する手法が必要とされていた。 

同研究所では、LAMP法(Loop-mediated isothermal AMPlification)というDNA技術を活用したヒアリ検出技術を新たに開発。LAMP法は、特定の種のDNA断片を特異的に増幅して検出する技術で、鳥インフルエンザの検出などにも活用されている。この方法ではアリの個体をすり潰してDNA溶液を抽出、それにLAMP試薬を混ぜてヒアリDNA断片を増殖させる。ヒアリが混入していれば反応溶液の白濁化が確認される。試験にかかる時間は約130分。

この技術を使用して、野外で捕獲されたアリがヒアリであるか否かを数時間のうちに確認することが可能になると見込んでいる。同研究所では「ヒアリDNA検出キット」を作成、5月から全国10地点の試験研究機関に配布して検出テストを行い、再現性を確認する予定。

ヒアリ簡易検出キットで早期防除 国立環境研究所が開発
LAMP法を用いたヒアリDNA検出試験結果。左から1.蒸留水、2.在来アリのDNA抽出液、3、ヒアリのDNA抽出液、4.ヒアリ1個体と在来アリ9個体のDNA抽出液、をそれぞれ混入した際の試験結果。ヒアリのDNAが含まれる3,4のみが白濁することがわかる。

ヒアリ簡易検出キットで早期防除 国立環境研究所が開発
LAMP法によるヒアリ簡易検出法の概略図

画像提供:国立環境研究所(冒頭の写真はイメージ)
 

参考記事
ヒアリに注意! 国際海上コンテナ輸送業者への協力呼びかけ(2018/04/06)
日本生態学会、特定外来生物ヒアリ侵入対策の要望書提出(2017/07/17)