NASAが太陽探査機打ち上げ 「極限の科学ミッション」 で太陽の謎に迫る
米航空宇宙局(NASA)の太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が日本時間の12日夕方、フロリダ州ケーブカナベラル空軍基地からデルタIVヘビーロケットで無事に打ち上げられた。この探査機は、人工衛星を傷つけ、軌道上の宇宙飛行士に害を及ぼし、地球上の無線通信を混乱させる可能性のある太陽風などを調査する。12月には最初の観測結果を送信する予定。
探査機は10月上旬に金星の重力を利用して軌道を変更し、この金星フライバイ(接近通過)によって11月上旬には太陽から2400万kmほどまで接近する。この辺りは太陽の高温大気であるコロナの影響下だ。7年間のミッション期間中にあと6回の金星フライバイを行い、計24回太陽の近くを通過する。探査機は徐々に太陽に近づき、最終的には太陽から600万kmほどまで近づく予定だが、その時の探査機の速度は時速約69万2000kmを見込んでおり、人工物として最速記録になるという。
今回の探査機は太陽を周回しながら、これまで科学者たちが60年以上に渡って求めてきた、以下のような謎の解決に取り組む。
●太陽コロナよりも何千kmも下にある太陽表面の温度は6000度であるのに、太陽コロナはそれよりも300倍以上も熱い秘密は何なのか?
●太陽系全体を通して吹く太陽物質の一定の流れである超音速の太陽風を駆動しているものは何なのか?
●太陽から光速の半分以上もの速度で放出されている高エネルギー粒子を加速させているものは何なのか?
このような謎の解明には、コロナの猛烈な熱に耐え得る探査機を送る必要があり、最先端の熱工学の進歩によってこのたび、ようやくそれが可能になった。
米メリーランド州のジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所(APL)のプロジェクトマネージャー、アンディ・ドリーズマン氏は、「今日の打上げは60年にわたる科学的研究と数百万時間の努力の集大成。今、パーカー・ソーラー・プローブは正常に動作しており、7年間に渡る極限の科学ミッションが始まった」と述べた。
なお、このミッションは1958年に最初に太陽風の存在を理論化した物理学者のユージン・パーカー氏にちなんで命名された。存命の研究者の名前を冠するミッションはNASAでは初めてのこと。
画像提供:米航空宇宙局(NASA)