土星の衛星「エンケラドス」に全球規模の地下海
米航空宇宙局(NASA)の土星探査機カッシーニで得られたデータから、土星の衛星エンケラドスを覆う氷の下に全球にわたる海が存在することがわかった。16日に『イカロス』誌にオンライン発表された。
エンケラドスの南極地域では、水蒸気や氷、単純な有機分子が間欠的に噴出している。このことから、南極地域の地下に部分的に液体の水たまりがあると考えられてきた。しかし、探査機が南極の近くを何度も通過する際に収集した7年分の重力データから、部分的な水たまりではなく、エンケラドス全球にわたる地下海である可能性が示された。
「これは難解な問題でした。何年もの観測とさまざまな分野にまたがる計算が必要でした。しかし、私たちはついに答えにたどり着いたという自信を持っています」と、論文誌の主執筆者で、カッシーニ画像チームのメンバーであるコーネル大学のピーター・トーマスさんは話す。
何百枚もの画像を使って、クレーターなどエンケラドスの特徴的な地形の位置に関する地図を慎重に作成し、エンケラドスのふらつく動きの変化を精密に測定した。そして、エンケラドスの内部が表面から中心まで凍結している場合など、内部構造をさまざまに仮定したモデルで測定した動きとの違いを調べた。
「表面から中心まで凍結している場合、ふらつく動きは測定結果よりもはるかに小さいだろう。これは、表面と中心との間に液体の層が全球的に存在しなければならないことを示しています」と、カッシーニプロジェクトに参加した科学者、SETI研究所のマシュー・ティスカレノさん。
エンケラドスの地下海が凍らない理由は謎だが、トーマスさんらは「土星の重力による潮汐作用で、これまで考えられていたよりもはるかに多くの熱が発生しているのではないか」といった、いくつかのアイデアを挙げている。
カッシーニは10月28日に、これまでのミッションで最も深く飛び込んで、間欠泉の中を通過するように飛行する予定だ。エンケラドスの上空わずか49kmのところを通過する。
画像提供:NASA