幸福度を決めるのは所得や学歴より「自己決定」 神戸大と同大が調査
神戸大学の西村和雄特命教授と同志社大学の八木匡教授は、国内2万人に対するアンケート調査により、所得や学歴よりも「自己決定」が幸福感に強い影響を与えることを明らかにした。この研究成果内容は12日に、神戸大学経済経営研究所創立100周年記念連続シンポジウム「幸せの計り方」において西村特命教授が講演する。また、経済産業研究所(RIETI)のディスカッション・ペーパーとしても公開される予定。
国連が今年3月14日に発表した世界幸福度ランキングで、156カ国のうち日本の主観的幸福度は54位だった。所得水準と幸福度は必ずしも相関しないと指摘されているが、幸福度に影響を与える要因として、所得、学歴、健康、人間関係など、何がどの程度影響しているかはっきりとは解明されていないが現状だ。
今回、RIETIの「日本経済の成長と生産性向上のための基礎的研究」の一環として、全国の20歳以上70歳未満の男女を対象に「生活環境と幸福感に関するインターネット調査」を2月8日~13日にかけて実施。配信数約93万件に対し3万3600件ほど回答があり、そのうち信頼性の高い2万件について、所得、学歴、自己決定、健康、人間関係の5つについて幸福感と相関するかどうかを分析した。また、主観的幸福感の調査も併せて行い、心理的幸福感の因子の信頼性を評価する参照指標とした。自己決定度の評価には、「中学から高校への進学」「高校から大学への進学」「初めての就職」について、自分の意思で進路を決めたか否かを尋ねた。
その結果、年齢との関係では幸福感は若い時期と老年期に高く、35~49歳で落ち込む「U字型曲線」を描いた。所得との関係では、所得が増加するにつれて主観的幸福度が増加するが、変化率の比は1100万円で最大となった。
また、幸福感に与える影響力を比較したところ、健康、人間関係に次ぐ要因として、所得、学歴よりも「自己決定」が強い影響を与えることが分かった。これは、自分の意志で進路を決定した者は、自ら努力することで目的を達成する可能性が高く、また、成果に対しても責任と誇りを持ちやすくなるため、達成感や自尊心で幸福感が高まると考えられる。
日本は国全体で見ると「人生の選択の自由」の変数値が低いが、そういう社会で自己決定度の高い人が、幸福度も高い傾向にあることは注目に値すると、同リポートでは指摘している。
(写真はイメージ)