アミノ酸の代謝を促し長寿に ショウジョウバエで確認
栄養として外部から摂取する必要のある「必須アミノ酸」のメチオニンをもとに体内で合成されるSアデノシルメチオニン(SAM)の消費を促すと、ショウジョウバエでは寿命が延び、SAMの代謝が長寿の鍵を握っていることがわかった。東京大学の三浦正幸教授らが、英科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』で9月18日に発表した。
酵母や線虫、ハエ、マウスといった幅広い生物で、食事からメチオニン量を制限すると寿命が延びることが知られている。線虫では、メチオニンからSAMを合成する機能を抑えるだけでも寿命が延びる。一方、人間では慢性肝疾患の患者がSAMを合成する能力が低下していることから、合成を抑えるのは有害であると考えられている。
研究グループははじめに、SAMの合成を抑えたショウジョウバエが「短命」になることを明らかにした。SAMの合成を抑えたのに、その量は正常な個体と変わらなかったが、これは、余分なSAMを消費する代謝調節機構によってSAMが一定量に保たれるためとわかった。一方、SAMの量は加齢にともなって増え、代謝も活発になった。そこで研究グループがSAM代謝能力を高めたショウジョウバエで調べたところ、年をとってもその量が増えず、長寿になった。
SAM代謝調整機構は人間にもあることから、代謝能力を高めることで、食べる量や質をそれほど変化させずに食事制限と同様な健康増進効果が得られる可能性がある。今後、SAMやその代謝産物がどのようにほ乳類の寿命に影響を与えるか詳しく調べていく。
画像提供:科学技術振興機構(JST)