2018年7月の記録的猛暑は地球温暖化の影響 気象庁が見解発表
気象庁気象研究所、東京大学大気海洋研究所、国立環境研究所の研究チームは22日、2018年7月の記録的猛暑は、地球温暖化の影響をうけていることを明らかにした。
これまでは異常気象の原因が温暖化によるものなのか、大気の本来持っている「揺らぎ」が偶然重なったものなのかを分けることは難しかった。最新の気候シミュレーションを使うことで、地球温暖化の異常気象への影響が数値で表せるようになったことが、今回の研究成果につながったという。
2018年は7月の豪雨や、近畿・四国を襲った台風21号など、多数の自然災害が発生した。特に、7月の記録的猛暑では熱中症による死者数が1000人を超え、月別死亡者数としては過去最高を記録した。このような異常気象は地球温暖化の進行に伴って今後も増え続けると予想されている。しかし異常気象は、過去数回しか経験したことがないため観測記録が少なく、大気が本来持っている「揺らぎ」が偶然重なって発生する可能性もあり、温暖化の影響を受けているかどうかをはっきりと評価することは今まで不可能だった。
同研究チームは、従来難しかった温暖化の影響評価を、気候モデルを用いて温暖化した気候と温暖化しなかった気候状態それぞれにおいて比較する手法「イベント・アトリビューション」を用いて実施。この手法は近年発達した大気の気候シミュレーションによって、発生する可能性のある偶然の揺らぎを網羅する方法で、今回世界に先駆けて取り入れた。
実際の過去の温暖化がある気候条件と、温暖化がなかったと仮定した気候条件のそれぞれについて、日本上空の気温が2018年7月の値を超える確率を推定した結果、実際の気候条件における7月の猛暑の発生確率は19.9%であったのに対し、温暖化がなかった気候条件ではほぼ0%だった。この数字は温暖化がなければ7月のような猛暑は起こりえなかったことを意味する。また、当時日本の上空に発達していた2段重ね高気圧の出現も、猛暑の発生確率を2倍に上げていたことも分かった。
将来の見通しとしては、平均的な年間延べ猛暑地点数は、工業化以降の全球平均気温の上昇が1.5度に抑えられても3000地点以上、上昇が2度に至ると4000地点以上で発生すると推定された。これは現在の約2500地点と比較すると、前者の場合約1.4倍、後者の場合約1.8倍となることになる。
今回の結果は、今後の地球温暖化への適応策推進への活用が期待される。なお、同研究成果は2019年5⽉22⽇発⾏の科学誌「Scientific Online Letters on the Atmosphere」に掲載された。
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