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法律家の目でニュースを読み解く! 芸人の「闇営業」問題の真相(後編)

法律家の目でニュースを読み解く! 芸人の「闇営業」問題の真相(後編)

著名なお笑い芸人が「闇営業」をしたことで事務所から契約解除となり、イベントに参加した13人のお笑い芸人が謹慎処分を受けたことが話題になっています。「闇」という言葉は、いかにも悪いことをしたという印象を与えますが、今回の件はどのような問題をはらんでいるのでしょうか。法的見地から考えてみたいと思います。
 

協力:三上誠
元検察官。弁護士事務所勤務を経て、現在はグローバル企業の法務部長としてビジネスの最前線に立つ、異色の経歴の持ち主。

 

芸能人の副業・個人営業が認められる範囲とは

芸能人は雇用契約の会社員ではなく、個人事業主であり、マネジメント会社とマネジメント契約を締結することが一般的です。マネジメント契約は、芸能人のスケジュールを管理したり、営業活動をして仕事をとってきたり、肖像権やパブリシティ権、著作権などの権利関係を管理したりする業務を行う契約であることが一般的です。

そしてこのマネジメント契約には、専属のものとそうでないものが想定されます。専属契約の場合、マネジメント契約に規定される業務は、契約したマネジメント会社以外に依頼してはならず、本人自ら行うことも禁止されます。専属でないマネジメント契約であれば、少なくとも本人自ら営業活動を行うことには特に問題はありません。

さらに、たとえ専属のマネジメント契約をしていても、副業が制限されるかどうかは契約内容によります。芸能人の得る報酬額は、売れっ子の場合は別にして、一般的には会社員のように安定していないことから、副業が許容される場合も多いのだろうと思われます。

 

芸能人には労働法が適用されない

一連の報道を見ていると、今回問題を起こした芸能人とマネジメント会社の間の契約は、専属マネジメント契約であるものの、契約書は存在しなかった、ということのようです。しかし、法律上、契約というのは別に書面がなければ成立しないものではありませんから、少なくとも法律上は契約書がないことは問題ではありません。

一方、専属マネジメント契約を締結していたとすれば、営業活動をして仕事をとってくる部分を自分でやれば契約違反の問題になります。しかしこれは、実情としては「じか(ちょく)」「職内しょくない」などの様々な名称で昔からこっそり行われているものであるため、これについては様々な芸能人から「解約は重すぎないか」との指摘があります。ただ、個人事業主である芸能人には労働法が適用されず、解雇について厳しい制約はありませんから、このような契約違反で契約解除されるとしても、それ自体に法的な問題はありません。またマネジメント会社の方針にもよりますが、契約違反が常習化しているかどうか、金額的に専属マネジメント契約を逸脱していないかどうかは、契約解除の際の判断材料になります。繰り返しになりますが今回の場合は、反社会的勢力とのつながりが大きく問題視された結果と言えます。

興業の世界はもともと暴力団や反社会的勢力との距離が近いと取りざたされる世界ですが、今回の件を通じて、反社会的勢力との関係についてもっと注目され、見直しがなされることになれば望ましいと思います。

(写真はイメージ)

法律家の目でニュースを読み解く! 芸人の「闇営業」問題の真相(前編)