地球温暖化によるコンブの分布域減少の可能性 北大が予測を発表
北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの仲岡雅裕教授と同大学院環境科学院の須藤健二氏らの研究グループは、北日本の昆布類の分布域が今後地球温暖化の進行に従って大きく減少することや、分布が限られている複数の種が日本の海域から消失する可能性が高いことを明らかにした。10月28日付の『Ecological Research』に研究成果が掲載された。
地球温暖化に伴って北海道や東北地方で主要水産資源となっているコンブ類は20世紀後半以降、分布域や生物量の大きな変化が観察されているが、今後の変動については十分な予測はされていなかった。
そこで、同研究では北日本に分布する主要なコンブ11種類について、既存の生物多様性データベースを用いて、1950年代から1980年代の出現記録を1958件抽出。温暖化が顕著になる前の1980年代における各種の日本北部海域での分布確率を推定した。そして、今後の地球温暖化に関する2つのシナリオに基づき、2040年代、2090年代における分布の変化を予測した。
データから、1980年代には、広域に分布するマコンブやスジメは、三陸沿岸から北海道にかけての太平洋沿岸及び北海道の日本海沿岸域に広く分布する一方、ネコアシコンブやナガコンブなどの種は分布域が北海道東部に限られていることがわかった。分布は海水温や波浪の強さ、自然海岸の割合などに影響を受けている。将来予測の結果としては、11種類すべてで、今後分布域が大幅に北上するか、生育適地が消失する可能性があることが予測された。特に温暖化の進行が著しいとされるシナリオでは、2090年代には北日本におけるコンブの分布域は1980年代の0~25%になった。
今回の研究結果は、地球温暖化が現在のスピードで進行すると北日本の藻場が大きく変化し、生態系に負の影響を与えることを示している。マコンブは水産有用種であることから、コンブ漁業や養殖業に与える影響も大きいことが懸念される。同研究で明らかになったコンブ各種の将来予測データは、漁獲対象種や漁獲量の管理、養殖適地の選定など、地球温暖化に対する適応策の立案にも活用が期待される。
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