小学校のオンライン化はPTAから始まった 今見直されるPTA活動
小学生の子どもを持つ親なら、いやおうなしに関わらないといけない「PTA」。身近に接していながら、PTAが任意加入の団体であり、加入しないでいても不利益がないことを知らない保護者も珍しくないようだ。そんなPTAがコロナ禍でどのように活動しているか、筆者の体験をもとに紹介してみたい。
PTAとは、P=Parents(保護者)、T=Teacher(先生)、A=Association(組織)の略で、日本で始まったのは終戦直後の1945年。これもあまり知られていないが、約800万人の会員を抱える日本最大の社会教育関連団体だ。活動内容は、学校行事や地域のイベントの運営や手伝い、子どもの安全のための地域パトロール、学校やPTAの広報活動などが一般的なものだ。今年5月に最上部団体である「日本PTA全国協議会(日P)」が、9月入学について慎重に検討するよう求める緊急要望書を文部科学省に提出したことが報道されて話題になった。
筆者のPTAとの関わりは娘の小学校入学から始まった。PTAの説明で、任意加入のことと加入しなくても不利益がないことを聞いた妻は、その潔さにこれは健全な組織だと感じて加入を決めた。私は「おやじ会」のライングループに登録してもらって、時々は行事の手伝いに参加するようにしていた。娘の小学校は川崎市の武蔵小杉のタワーマンションを学区に持ち、娘の入学の一年前には児童数増加に伴って校舎が一つ新造されていた。
新型コロナの影響で小学校は3月4日から春休みになり、子ども会や地域の行事も次々と中止になった。一方おやじ会では、月一回の懇親会をいち早くZOOM飲み会にしたり、公園が密になったと聞いたら別の場所を紹介したりしていた。
ところが肝心の小学校の授業については、宿題として膨大な量のプリントが配られたのみだった。普段から小学校からの連絡は児童に渡されるプリントが主体。どんな家庭にも漏れなく情報を伝えるのにはその方法が一番いいからだ。さらには小学校のPCのほとんどがインターネットにもつながっていないという、授業のオンライン化には程遠い環境だ。
4月になっても状況が変わらないので、小学校のPTAが主体になって動き始めた。4月末にメールで各家庭にアンケートを取ったところ、ほとんどの家庭でオンライン環境が整っているとの回答が得られた。そこで、5月頭に小学校の教員とZOOMのテスト交流会を実施し、ZOOMがどういうものなのか体験してもらった。PTA主催のイベントに任意で参加してもらうという形で、先生方を少しずつオンライン化に巻き込んでいったというわけだ。その一方で学校と家庭間のオンラインコミュニケーションについて予算が取れるように、PTAから県会議員に働きかけもした。不登校児童のためにリモート授業が受けられるようにならないかと、希望も語られた。
その後PTA主催のZOOMイベントは、5月第3週の平日と土曜日の2回開かれた。子どもたちにとっては新しい学年に進んで初めて、先生や友だちと顔を合わせる機会になった。子ども同士でたくさんの顔が一気に見られて楽しかったようだ。先生への質問コーナーも大いに盛り上がった。これに刺激を受けて、その後すぐ小学校主催のZOOMミーティングも行われるようになった。子ども会のイベントもZOOMで行われ、小学生にもZOOMが身近になっていった。ZOOMのセキュリティに対する不安に対しても、IT関係の仕事に就く父兄らが教員に対して、一つ一つ回答して解決していった。
今回主導的に動かれていた父兄によると、学校側はネガティブな可能性があると絶対にやりたがらないとのこと。そこを保護者が校長先生と何度も話し、何かあったらPTAが責任を取ると説得して、意識を変えていったそうだ。小学校は、おそらくオンライン化とはもっともかけ離れた環境と言えるだろう。そんな中でも、このように保護者が声を上げることで状況を変えていくことができる。娘の小学校でその実例を間近に見ることができた。
小学校は6月から再開されたが、コロナ禍はまだ気を許せるような状況ではない。今後また休校になるようなことがあったとしても、PTAの活動を通して積み上げたものが良い形で活かされることを願う。
(写真はイメージ)