日本固有のチョウ、オガサワラシジミが絶滅の可能性
環境省は8月27日、同省及び東京都が生息域外の増殖に取り組んでいた絶滅危惧種オガサワラシジミの飼育下の全ての個体が死亡し、繁殖が途絶えたと発表した。2018年を最後に野生での個体が確認されていないため、オガサワラシジミは絶滅した可能性がある。野生下でも絶滅なら日本産チョウ類の種レベルにおける絶滅第1号となる。
オガサワラシジミは小笠原諸島固有の小型のチョウ。シジミチョウ科で、環境庁レッドリストの絶滅危惧IA類、国の天然記念物。オスの羽表面は暗青色で外縁部が黒く、メスの羽表面は暗青色から黒色。かつては小笠原諸島の父島、母島に多数生息していたが、父島では1992年以降生息が確認されておらず、母島でも最後の確認は2018年6月である。
野生での生息を脅かした原因は、外来種の爬虫類グリーンアノールによる捕食が主な要因。さらに、干ばつや台風による被害や開発の影響、外来植物の侵入による植生の変化、コレクターによる捕獲も減少要因としての可能性が指摘されていた。
環境省と東京都は2005年よりオガサワラシジミの飼育下繁殖に取り組んできた。多摩動物公園において2017年に1年以上の継続した累代飼育に初めて成功。2019年に新宿御苑でも分散飼育を開始したが、2020年4月に有精卵率が急激に低下し、7月に新宿御苑で飼育の全個体が死亡した。そして8月25日に多摩動物公園で飼育の最後の個体が死亡した。
有精卵率が急激に低下し繁殖途絶となった原因は現時点では不明だが、野外からの個体を追加できなかったための近親交配による有害な遺伝子の蓄積が要因の一つとして指摘されている。
環境省が保護増殖事業として実施している生息域外個体群が途絶えたのは今回が初めて。同省は早期の保護増殖事業の策定・実施の重要性が再認識されたとし、今回の件を教訓としてその他の絶滅危惧種についての保全対策に取り組んでいくとしている。
画像提供:環境省