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新型コロナのロックダウンでPM2.5が40〜70%減少 インド・デリー

新型コロナのロックダウンでPM2.5が40〜70%減少 インド・デリー

総合地球環境研究所は8月26日、新型コロナウイルス感染症によるロックダウン後、インド・デリーの大気汚染が静まり青空が戻ってきたのは、直径2.5ミクロン以下のエアロゾル(PM2.5)がロックダウン前に比べて40〜70%減少したためであると発表した。4月から発足した大気浄化と公衆衛生、持続可能な農業のあり方を研究する「Aakashアーカシュプロジェクト」の中で調査が行われた。

インドは大気汚染の激しい都市が多くある国だが、新型コロナの拡大を阻止するためロックダウンが施された後、大気汚染が静まりきれいな空が戻ったことが多数報告されていた。デリーでは、インド北部のパンジャーブ農村で行われる藁焼きに起因した大気汚染に悩んでいたが、毎年11月初旬ごろ顕著になる大気汚染が、車や工場などを発生源とするものなのか、藁焼きの影響なのかは区別が困難だった。そこで、ロックダウン開始前後の大気汚染物質濃度を比較し、人為的な活動による大気汚染物質の排出低減の定量化を行った。

デリー市内が運営する大気汚染物質監視ネットワーク「Delhi Control Ommittee(DPCC)」と、インド政府が運営する大気汚染物質監視ネットワーク「The Central Pollution Control Board(CPCB)」のデータから、デリー市内8カ所の地点でロックダウン前後のPM2.5濃度を比較した。また、名古屋大学名誉教授の松見豊氏と長崎大学准教授の中山智喜氏が開発したPM2.5測定用のセンサー「CUPI(Compact Useful PM2.5 Instrument)」を用いて、4月1日から14日までデリー郊外のデワルカで1時間ごとのPM2.5の変化を詳細に解析し、気象データと比較した。DPCCとCPCBのデータから、3月25日のロックダウン前後でPM2.5の濃度を比較したところ、4月14日のロックダウン初期に、PM2.5がその直前の値に比べて40〜70%減少したことが分かった。これはロックダウンによって経済活動が停止したことによって、大気汚染物質の放出が一時的に激減したことによる。しかしその後はロックダウンが継続していたにも関わらず、PM2.5 の値は朝方、上昇することが分かった。上昇したのは、もやのような気象条件の強い影響を受けているためと考えられる。

今回の成果は、ロックダウンによるインドの大気浄化を定量的に計測した初めての知見。人為的な発生源の停止によるPM2.5の減少は単純な現象ではなく、湿度や太陽の光などの気象条件に大きく依存することもわかった。研究チームは今後、気象条件も加味してロックダウン時の大気汚染物質の低減の程度から元の発生量を推定する手法を確立するとしている。

(写真はイメージ)