青色の天然着色料を赤キャベツの成分から発見 名大

青色の天然着色料を赤キャベツの成分から発見 名大

名古屋大学大学院情報学研究科の吉田久美教授らは、世界的なお菓子メーカーであるマース・リグレー社(M&M’S®やスニッカーズ®が有名)などとの10年に渡る国際共同研究の結果、赤キャベツのアントシアニンから青色の天然着色料を発見した。合成着色料である青色1号に代わるものとして期待される。この成果は4月8日に「サイエンス・アドバンシス」オンライン版に掲載された。

これまで見つかっていなかった青色の天然着色料

食品着色料は、料理に彩りを与え、食欲を増進させる効果などから飲料、菓子類を含め、様々な食品に用いられている。昨今は合成着色料から天然着色料への転換需要が急成長しており、2028年までに49億ドルに達すると予想される。しかし、青色だけは天然色素による安定した発色が困難で、これまで合成タール系色素である青色1号が使われてきた。青色は黄色と混ぜることで緑色となることからも、天然由来の青色着色料の開発が切望されている。

現在日本で認可されている天然の青色色素には、クチナシの実の成分を化学反応させて得られるクチナシ青と藍藻のスピルリナから抽出したスピルリナ青があるが、どちらも青色1号とは性質や発色が異なり、完全な代替品にはなっていない。

赤キャベツのアントシアニンに着目

今回青色の天然着色料を発見した赤キャベツのアントシアニンは、これまでも赤〜紫色の食品着色料として長年使われてきた。アントシアニンは10種類以上の色素の混合物であり、酸性で赤、中性で紫、アルカリ性で青を示すものの、この青色は不安定で熱によって分解してしまうため、青色着色料として使うことはできなかった。

このアントシアニンは、金属イオンと錯体(金属と非金属の原子が結合した構造を持つ化合物)を形成すると青色になることが知られている。そのため当初は混合物の状態のアントシアニンに金属イオンを加えて青色着色料とすることを考えたが、色が濁り、青紫色になることが課題だった。そこで、アントシアニンの個々の色素を取り出して金属イオンを加え、発色と安定性を調べたところ、P2と番号をつけたアントシアニンだけが、アルミニウムイオンを加えることで美しい青色を示し、中性の薄い溶液でも極めて安定することがわかった。

酵素を用いてP2を大量に得ることに成功

しかし、P2は赤キャベツに少量しか含まれていない。そこで次に、赤キャベツからこの色素だけを大量に得る方法を検討し、赤キャベツに含まれるアントシアニンのうちP6、P7、P8をP2へ、P3、P4、P5をP1へと効率的に加水分解する酵素を見出した。この酵素を用いて、赤キャベツのアントシアニンをP1とP2のほぼ1対1混合物へと変換してから分けることで、純粋なP2を大量に得る方法を確立した。

研究チームがP2のアルミニウム錯体の化学構造と、なぜこれほど青色が発色するかについて考察したところ、化学構造についてはP2とアルミニウムイオンが3:1で含まれる構造であることがわかった。赤キャベツに含まれる他の色素では、このような青色の発色は得られず、P2の構造に由来する極めて特別な錯体であることがわかった。

この色素をチョコレートのコーティングやアイスクリームの色付けに使ったところ、青色1号に近い発色が得られ、保存安定性も非常に優れていた。またサフロール黄と混合して緑色にコーティングした場合も、この色素が最も青色1号に近い発色であった。

今回発見した赤キャベツ由来の青色着色料により、食品産業における天然着色料への切り替えがさらに促進されることが期待される。

(写真はイメージ)