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IoT機器の自立電源に どこでも発電できる湿度変動電池を産総研が開発

産業技術総合研究所(産総研)は2日、空気中の湿度変化を利用して発電できる「湿度変動電池」を開発したと発表した。小型電子機器用の自立電源としての利用が期待できる。この技術の詳細は、英国王立化学会の学術誌「Sustainable Energy & Fuels」に2日付で掲載された。

近年のIoT(Internet of Things、モノのインターネット)技術の進展によって、膨大な数の電子機器にどのように電源を供給するかという問題が生じている。環境中の微小なエネルギーを用いて自立的に発電を行う環境発電技術が研究されているが、従来の技術で利用している熱、光、振動などはどこにでもあるわけではなく、「どこでも発電できる」技術の実現が望まれていた。

今回開発された湿度変動電池は、潮解性無機塩水溶液の吸湿作用と塩分濃度差発電の技術を組み合わせることで、湿度変動を用いた発電を可能にしている。潮解性とは化合物が空気中の水分を吸収して水溶液になる性質のこと。塩分濃度差発電とは塩分濃度の異なる2種類の水溶液を用いる発電方法で、代表的なものとして河川水と海水を使った発電の研究が行われている。今回の湿度変動電池は、大気に開放された開放槽と密閉された閉鎖層からなり、二つの層には水と潮解性を有するリチウム塩からなる電解液が封入されている。

低湿度の時は、開放槽からは水分が蒸発して濃度が上昇するが、閉鎖槽は密閉されているため濃度変化は生じない。これによって開放槽と閉鎖槽の間で濃度差が生じ、電極間に電圧が発生する。高湿度の時は、逆に開放槽内の水溶液が空気中の水分を吸収して濃度が減少する。これにより低湿度の時とは逆向きの濃度差が発生し、逆向きの電圧が発生する。この過程が繰り返されれば、理論的には半永久的に湿度の変動から電気エネルギーを取り出すことができる。空気中の湿度は昼夜の温度変化などに伴って一日の中で数十%の変動があるため、これを利用すれば「置いておくだけでどこでも発電できる」技術が実現できる。

実際に湿度変動電池を作製し、温湿度が制御できる恒温恒湿槽内で2時間ごとに湿度30%と90%を繰り返したところ、湿度30%のときには22~25mV程度、湿度90%のときには-17mV程度の電圧が発生した。電圧が最大となっているときに負荷を接続して出力測定を行ったところ、最大で30μWの出力が得られた。また、1mA以上の電流を1時間以上継続して出力することもできた。

今回開発された湿度変動電池は、湿度変動から比較的大きなエネルギーを長時間安定して取り出すことができ、IoT機器などの極低電力電源としての応用が期待される。研究グループは、さらなる出力向上や長期間使用時の耐久性など、実用化に向けた研究を行っていくとしている。

画像提供:産総研(冒頭の写真はイメージ)