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企業で広がるペット向け福利厚生、特別休暇や扶養手当など

日本は今、15歳以下の子供の数よりもペットの数が多くなっていることをご存じでしょうか。201941日現在の15歳以下のこどもの数は1533万人(総務省統計局)ですが、2020年の犬・猫の飼育頭数は1813万頭(ペットフード協会)となっています。

ペットの増加に加えて少子化や単身世帯の増加などにより、飼い主とペットとの心理的距離が以前に比べて近くなり、ペットも家族と捉える傾向が強まっていると言われています。こういった傾向を受けて、企業でも、慶弔休暇や育児休暇といった人間の家族に対する福利厚生制度をペットに対しても適用する流れが起こっています。

ペットに関する福利厚生を導入している国内・海外の民間企業の事例を紹介します。

ペット関連企業で進むペットの福利厚生

7000匹の犬がオフィスに:アマゾン

大手ECモールのアマゾンジャパンは、ペット関連商品を多数取り扱っています。アマゾンジャパンでは通常の有給休暇に加えて、自身や家族の病気や看護などのために取得できる「パーソナル休暇」(有給)を付与していますが、これは家族の一員であるペットにも適用することが可能となっています。

また米国のアマゾンでは、ペットの犬を職場まで連れていける制度があり、コロナ禍前のシアトル本社では7000匹の犬が飼い主と出勤していたことを、アマゾンのスタッフブログで述べています。

 

ペット忌引制度や動物ボランティア休暇を導入:バイオフィリア

手作りドックフード「ココグルメ」を販売するバイオフィリア(東京都品川区)は創業時からペット忌引制度を導入していています。さらに2021525日にはその制度を見直し、ペットが亡くなった翌日から3日間の特別休暇を取得できる規則をペットが亡くなる前日より3日間の特別休暇を取得できるように改正したと発表しました。同社代表の岩橋氏の「愛犬を亡くしたとき、もっとしっかり看病をして看取ってあげれば良かったという後悔が残った」という原体験から今回の制度改定に至ったそうです。

また、動物ボランティアに参加する場合、年に2日の特別休暇が取得できる「動物ボランティア休暇」や、ペットと一緒に暮らしている社員に対し1匹につき月2000円を支給する「ペット扶養手当」を新規導入しました。扶養手当については、保護施設などから引き取った場合は3000円を上乗せして支給するとしています。

その他、同社はペットの同伴出勤を認めており、ペットを連れてくることができなかったり、ペットの体調が優れないといったケースではリモートワークを推奨しています。

 

ペットの通院などに使えるペット休暇:アイペット

ペットの医療保険を取り扱うアイペット損害保険(東京都港区)は、同居しているペットが亡くなった際に休暇を取得できる「ペット忌引き」、同居しているペットと過ごすための休暇を取得できる「ペット休暇」を導入しています。2017101日~2018930日で全従業員の30%以上がペット休暇制度を利用しており、ペットの手術や急な通院で休暇を取得した従業員からは「動物病院の診療日と休日が合わないときに、ペット休暇が使えて助かった」などの声が寄せられているそうです。

ペット関連以外の企業での導入状況は?

ペット関連以外の会社でも、ペット関連の福利厚生制度の導入は広がりをみせています。

ほほえみの宿滝の湯(山形県天童市)は、202010月から飼っている犬、猫が危篤になったり亡くなったりした場合、3日の特別休暇を取得できるよう就業規則を変更しました。愛犬を亡くした社員が悲しんでいるのを目の当たりにした事が改正のきっかけになったそうです。

またIT企業のファーレイ(東京都中央区)は「猫とはたらく企業」として国内外で知られています。社員の半数以上が猫を飼っており、猫を飼う社員には毎月「猫手当て」5000円が支給されます。また猫同伴出勤制度も取り入れています。

最後に

日本では欧米などと比較して、ペット飼育者の感情を他者が共感・共有しづらい社会的環境があります。そのためペット飼育者は心理的に孤立感を感じることもあると言われています。こういったペットの福利厚生の導入は、ペット飼育者にとってペットの介護におけるストレスやペットロス等を軽減させる可能性もあることが伺え、社員が安心して働くことができる職場づくりにつながるものと思われます。

ただし、ペットに関わる制度を導入する上で、ペットを飼っていない社員、ペットが苦手な社員に不利益が生じてはいけません。ペットを飼っている社員、飼っていない社員、どちらにとっても快適に働けるような制度づくりが求められていくように思います。

執筆者略歴:芳山喜代
東北大学理学部卒、同大学理学研究科修了。ペットロス療法士、メンタルケアカウンセラー。
大学病院にて婦人科系疾患等の臨床研究に携わった後、NEWS SALTに参加。現在は人間とペットとの関わりを中心に執筆している。

(写真はイメージ)