分子の鎖を並べた柔らかい結晶を開発 多孔性材料の応用へ
理化学研究所(理研)、東京大学、科学技術振興機構は14日、リング状の分子二つがつながったカテナン分子を3次元的に精密に配列することで、外から加えた力に応答する柔らかいゴムのような性質を示す結晶の開発に成功したと発表した。二酸化炭素などの気体分子を吸脱着できる、多孔性材料の応用などにつながることが期待される。この研究成果は科学雑誌「Nature」のオンライン版(10月13日付:日本時間10月14日)に掲載された。
カテナン分子は、リング状の分子を鎖のようにつなげることで組み立てられた分子の総称。カテナン分子の結合は機械的に鎖状に連結されているために運動の自由度が高い。カテナン分子を多数結合することで特異な力学特性を持たせることができるのではないかと期待されてきたが、これまで開発された材料はカテナン分子がランダムに配置されたものばかりだった。
この研究は、理化学研究所創発物性科学研究センター統合物性科学研究プログラム創発分子集積研究ユニットの佐藤弘志ユニットリーダーらの研究グループによるもの。共同研究グループは、多数のカテナン分子を連結しながら3次元的に精密に配列させれば、全てのカテナン分子が連動して動く新材料の開発につながるのではないかと考えた。
研究によって得られた結晶は、様々な環境変化に応答して構造を変化させることがわかった。結晶中の1nm程度の微細な穴に取り込まれた溶媒分子を加熱や真空処理によって取り除くと結晶は収縮し、溶媒に浸すと膨らんで元の構造に戻った。温度変化については0℃以下の低温でも構造が柔軟に変化した。また、力学的な特性については力に対して非常に変形しやすく、結晶でありながら力を除くとまるでゼリーのように元の形に戻るという現象を見せた。結晶の微小な穴に分子が存在するかしないか、また取り込まれる分子の種類は何かによって結晶の力学的な特性も変化した。
今後は機械的な結合をもつパーツの設計を工夫することで、さらに小さな力で変形する結晶の作成に取り組んでいくという。将来的には指でつまんだり離したりすることで、二酸化炭素のような気体分子を効率良く取り込んだり放出したりできるスポンジのような結晶、多孔性材料の開発につなげていきたいとしている。
画像提供:理研(冒頭の写真はイメージ)