「ヘラルボニー/ゼロからはじまる」 異彩のアート展覧会
東京京橋にオープンしたBAG -Brillia Art Gallery-にて、展覧会「ヘラルボニー/ゼロからはじまる」が2021年10月15日~2022年1月23日の期間で開催されている。
福祉実験ユニット「ヘラルボニー」は、日本と海外の障害のある作家が描いたアート作品を様々なモノ・コト・バショに展開することで、「障害」という言葉が持つイメージを変える活動をしている。「ヘラルボニー」の社名は、創設者である松田崇弥氏と文登氏の、障害のある兄翔太氏が、小学校時代に記していた言葉から名付けているという。
展覧会では、原点となる幼い頃の兄との体験を紐解く展示をはじめ、人生の転機となった岩手県花巻市の「るんびにい美術館」で出会った“異彩”のアートの原画が展示されている。それらのアート作品はインテリアや商品パッケージとしてライフスタイルに、建設の仮囲いやアートステーションとして街づくりにと、新しい価値と変化の兆しを纏って社会に届けられ、福祉を起点とした新たな文化をつくりだしている。
彼らが社会に送り届けたいのは、障害者アートでもアートがデザインされた製品でもない。「障害=欠落ではない」という考えと、内なる認識の「変化」だという。知的障害というひとくくりの言葉の中にも、無数の個性がある。豊かな感性、繊細な手先、大胆な発想、研ぎ澄まされた集中力、「普通」でないことは同時に可能性でもある。この世界を隔てている先入観や常識というボーダー(境界)を超えたいと、ヘラルボニーは考えている。
るんびにい美術館アートディレクターの板垣崇志氏は、その目指すものについて「アートは心の世界と物の世界の境目の、その軋轢のはざまに生まれる。この軋轢の中で、『命』に目を向け、意識し、考える。社会がそんな価値観を成熟させていく中に、この軋轢を乗り越える道、疎外を克服していく道があるのではないか。あらゆる社会的マイノリティが疎外される社会に対して、見る者の『命に触れる』アートを発信したい」と話している。