人間と同じ修復能力を持つ培養皮膚の指型ロボットを開発 東大
東京大学は10日、人の皮膚細胞から培養した生きた皮膚を持つ指型のロボットを開発したと発表した。この皮膚は人間と同じ修復能力などの機能を持ち、今回の研究により、生きた肌を持つ指型のロボットを作製することに世界で初めて成功した。
この培養皮膚は、将来のヒューマノイドロボットの被覆材料だけではなく、義手・義足分野や皮膚を対象とした化粧品や医薬品の開発、移植素材としての再生医療分野などでの活用が期待できる。なお、同研究の成果は米国科学雑誌「Matter」オンライン版に9日(現地時間)に公開された。
東京大学大学院情報理工学系研究科の竹内昌治教授らの研究グループは、人の皮膚の細胞を培養して増殖させることで作製した「培養皮膚」を用いて立体物を被覆する手法を開発し、生きた皮膚で覆われた世界初のロボットを作製した。
骨格となるロボットは3関節の指形状をしていて、関節運動を行うことができる。培養皮膚は、生体内の皮膚と同じく真皮細胞とコラーゲンからなる「真皮層」と、内部組織の水分量を保ち周囲の有害物質を通さないバリア機能を持つ「表皮層」の二層から構成される。
まず指型ロボットの周囲で真皮細胞を含んだコラーゲン溶液を培養して、これをゲル化させると激しく収縮し、指型ロボットをぴったりと被覆する培養皮膚が形成される。その後に培養皮膚の表面全体に表皮細胞を播種し、培養を進めることで表皮層が形成されるという。
指型ロボットは形成された培養皮膚を破壊することなく関節運動を行うことが可能であり、また培養皮膚表面には撥水性のある表皮の層が形成されている。また、培養皮膚は傷つけられてもコラーゲンシートを傷口に貼ることで修復することができる。
同グループは、今回の研究で開発した培養皮膚ロボットの作製技術は、人間のような柔らかく自己修復機能を持つ皮膚を備えたロボットの作成の他に、皮膚を対象とした化粧品や医薬品の開発、移植素材としての再生医療分野での活用も期待できるとしている。
画像提供:東京大学(冒頭の写真はイメージ)