マスクの使用実態と付着した菌を検証 1日程度の交換を推奨
近畿大学の朴雅美講師らを中心とする研究グループは、使用済みマスクに付着した菌を調べたところ、多くは無害であるが一部有害な菌を検出した。このことから、マスクは1日程度で交換することを推奨すると発表した。この論文は科学雑誌「サイエンティフィック・リポーツ」に7月18日付でオンライン掲載された。
不織布マスクのウイルス感染に対する有効性は広く研究されているが、使用済みマスクの衛生面、特に付着した細菌や真菌の実態に着目した研究はこれまでなかった。そこで研究グループは、2020年9月から10月の2カ月間に、109人(男性63人、女性46人)のボランティアに対してマスク使用の実態を調査した。その結果、不織布マスクが78%を占め、それ以外の大部分はウレタンマスクであった。また、不織布マスク使用者の75%は1日で使い捨てていたが、3日以上使用している人も14%いた。
回答者全員の使用済みマスクの内側と外側のそれぞれに付着した細菌と真菌を培養し、菌の数および種類を調べた。その結果、全てのマスクから細菌と真菌が検出され、細菌の方がより数が多かった。また、細菌の数はマスクの内側で多い一方、真菌の数はマスクの外側で多かった。マスクの使用日数が長いほど真菌の数は有意に増加したが、細菌の数は増加しなかった。これは、多くの細菌が乾燥に弱く、マスクを着用していない夜間などに乾燥して死滅するのに対し、真菌は比較的乾燥に強いため、死滅することなく付着し続け、数日の間に蓄積されたのではないかと推測している。
さらに、性別や日々の習慣と菌数・菌種の関係を調べた結果、通勤時の交通システムの違いや、うがいの習慣などの条件が菌の増減に影響することはなかった。一方、男性で細菌がやや多く検出され、洗顔や化粧水の使用などスキンケアを多く行っている人ほど検出される細菌数が少ないことが判明した。
今回の検出された細菌・真菌の大部分は、通常は病気を起こさない菌だった。しかし、黄色ブドウ球菌など病気の原因となる菌も検出されたことから、マスクの継続使用には注意が必要であり、1日程度で交換することが推奨されるとした。糞便に由来する菌も検出されたが、これは正しく洗浄できていない手でマスクを触ったことで付着した可能性が考えられるという。こうした有害な菌はマスクの外側で検出される頻度が高いことから、使用しているマスクの外側と内側を間違って装着することがないように気をつける必要もあるという。
日本ではコロナ禍以前より、花粉症対策などでマスク使用が他国より日常生活に浸透している。この研究成果が、今後の衛生的なマスク着用の方法を考えるうえで有効活用されることが期待される。
画像提供:近畿大学(冒頭の写真はイメージ)